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てっしゅう
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「不思議な夏」 第四章~第六章

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「そうだ、下着はつけなくて良いよ。寝るだけだから。ここに買ってきたパジャマを置いておくから、着なさい。それとバスタオルで身体を拭くと良いよ」
「ありがとうございます。貴雄さん、もう出ますから・・・見ないで下さいね」
「見たら・・・どうする?」
「そのようにいじめないで下さい。ここから出ませんから」
「おいしいカレーが出来ているんだよ。早く出ておいで。台所で待っているから」
「はい」

志野はピンク色のパジャマを着て貴雄のところへ来た。濡れている髪をタオルでまきつけて水気を取っていた。
「髪が乾かないのでいつも困るんです・・・」
「ドライヤーを貸してあげよう、ちょっと待ってて」

洗面台から取り出して台所へ持ってきた。コンセントを入れて、スイッチを入れた。ゴーと温かい風が出てきた。
「ほら、これで乾かせば直ぐだよ。僕がしてあげるから、座ってなさい」
「温かいです・・・便利なものですね」
貴雄は丁寧に髪を乾かしてあげた。その長い柔らかな髪は艶を放ってしんなりと乾いてきた。
「今度から自分で乾かすんだよ。これはお風呂の前にある洗面台っていう鏡のあるところに置いてあるから」
「はい、そうします。ありがとうございました。自分の髪をこうして乾かして頂いたのは、初めてです。志野は嬉しいです」

明るい台所の蛍光灯の下で、志野の顔はとても可愛く見えた。すっぴんであることを忘れさせるほど、艶のある肌をしている。15歳だからなのか、いにしえの女性だからなのか、貴雄には化粧をしている今の女性が哀れに思えてきた。

「貴雄さん、先ほどから何を飲まれているのですか?」
「これかい?ビールって言うんだ。お酒だよ」
「見たことがない色ですね・・・それに何か泡が出ていますし」
「飲んでみなさい・・・と言いたいけど、未成年だからいけないな。飲んではいけないって言うことになっているんだよ、今は。それにタバコを吸ってもいけないんだ。20歳になるまではね」
「そうなのですか、何故です?」
「大人になる歳が20歳だからだよ、今は」
「元服が20歳なんですか?」
「まあ、そのようなものだね。志野の居た時代と違って今は80歳まで元気で暮らせるんだ。だから、結婚も30歳ぐらいでするし、子供も40を過ぎて生んだりする。すべてが遅くなっているんだ」
「40で子供を生むのですか!そんな事出来るのですか?」
「そういう人もたくさんいるよ。逆に20歳未満で子供を産む女性はいなくなったね」
「私はもう子供を生んでもおかしくないと考えておりました。戦がなければ多分、とある殿方に嫁いで、直ぐに子供を生んでおりましたでしょう。貴雄さんは私が子供を生むことは早いと思いますか?」
「早いね。この世界では。そのようなことを考えなくても良いよ。女として楽しめることがまだまだたくさんあるからね」
「そのように遊んでばかりいてはいけないのではないですか?」
「20歳を過ぎるまでは構わないんだよ。世間はそうしている。一人前と認められるのが20歳だから、それを過ぎてからで十分なんだ」
「私は今の身体で生まれておりませんから、80歳という歳までは生きられませぬ・・・そうではございませんか?」
「・・・志野、この世界で暮らせば、生きられる。そう信じて二人で生きてゆこう」
「貴雄さん、本当にそう信じてよいのですか?私だけが先に老いて行くのは、悲しゅうございますから・・・」

志野にそう言われて、そうかもしれないと一瞬思った。悲しさが襲ってきた。跳ね返すようにその場を繕っては見たが、その疑問は消えることがなかった。

「さあ、元気を出さないと。ご飯を食べよう。買ってきたご飯をチンして・・・どう?すごいだろう!温かいご飯が直ぐに食べられるから」
「その・・・チン!って言うのはなんですか?」
「レンジって言うんだよ。難しいから理屈は言えないけど、冷えたものが直ぐに温められる機械だよ」
「水もお湯になるのですか?」
「そうだよ。今は冷凍してあるものが多いからとても便利なんだ。この大きな機械は冷蔵庫って言って、冷やして物を保存している。ここから出して、チン、すれば直ぐに食べれるんだよ」
「時間を掛けてご飯を炊いたり惣菜を作ったりする必要が無いと言うことになるのですね・・・」
「そうだけど、基本は時間を掛けて作っているよ。急いでいるときとか、忘れたときに便利に使っているだけ」
「そうでしたか、安心しました。なんでも便利になると怠けてしまうと思いましたから」
「ある意味怠けているね、今の主婦たちは。志野も使い方覚えたら直ぐに料理なんか出来るようになるよ」
「はい、でも、煮たり焼いたりして美味しいものを作りたいです。母が良く作ってくれた山菜と高野豆腐の煮物とか、今度作りますから食べて下さい」
「それは楽しみだね。じゃあ、明日は志野が晩ご飯作る番にしよう。じゃあ、食べようか、こうしてご飯の上にカレーをかけて・・・箸じゃ食べにくいから、このスプーンでこうして食べるといいよ」
「これは便利ですね!簡単に食べられて・・・美味しい!です。でも、ちょっと辛いです・・・ゴホッ!」
「大丈夫かい?無理なら白いご飯とお漬物で済ませてもいいよ」
「いいえ、ちょっと急いで食べたので詰まっただけです。とても美味しいです。このお肉も柔らかくて、初めての味です。志野はまた食べたいです」

何とか食べ切って最後にそう言った。洗い物の仕方を教えて、ソファーに座り、テレビを観せた。動く画面にくぎ付けになり、しばらくは何も言わずに観ていた。


-----第五章 戸籍と仕事-----


「貴雄さん、今観ているのは本当の事なのですか?」
「実際に起こっている事を見せているものと、作り話で見せているものとがあるんだ。ごちゃごちゃになって解らないと思うけど、そのうち見分けられるようになるから疑問に思えたら聞けばいいよ。答えてあげるから」
「はい、下に文字が出てきて何を言っているのか解りますから、観ていて楽しいですね。ずっと観られるのですか?」
「早朝から深夜まで観れるよ。中には意味不明な番組もあるけど、嫌だと思えばチャンネルを替えて違う番組を観ればいいから、こうしてこのリモコンの数字を押せば・・・ね?変わって行くだろう。10チャンネル以上あるから退屈しないよきっと」
「この小さなもので操るのですね・・・チャンネルってなんですか?」
「説明が難しいけど、観られる種類かな、ボクたちが観て楽しいものを競争して作っている会社の放送枠って言う事かな。大体はね東京で作られたものを電波に乗せて日本全国へ運んでいるんだよ。ここにあるパソコンって言うものは、電波回線で全世界に連絡出来るようになっているんだよ」
「もう、よく解らなくなってきました。それより、明日はどのようにすればよいのですか?」
「そうだね、どうしようか・・・ボクは仕事があるから一旦昼前に出かけるよ。留守番しててね。志野の事があるから、しばらく休暇をとってくるよ。伯父さんにも会わせたいし。手続きしなければならないことも在るしね」
「伯父上に・・・私を紹介してくださるのですか?」