素晴らしい偶然
半年前の市民美術展の会場で、わたしはあなたのお描きになったあの絵から少し離れた場所に、三時間も立っていました。あの絵を描いた人が、どんなひとなのかを知りたかったからでした。市民美術展には、わたしも下手な絵を出品しましたが、お気付きでしたか?それはひまわりの絵でしたが、恐らくご記憶にないでしょうね。誰も注目しない稚拙なものですので、それは仕方がないことだと思っています。
あの日初めてお見かけしたあなたは、あなたのお友だちらしい男性とご一緒でしたね。そのかたがあなたの絵をおほめになり、あなたは嬉しそうでしたね。その優しさを感じさせる笑顔に、わたしは恋をしてしまいました。わたしがあなたをお慕いするようになったのは、あのときからです。わたしがいまも、あなたに恋をしていることは、間違いありません。眠れないのです。こんなことは初めてです。心が燃えているような、そんな感じです。あなたはわたしが大好きなもうひとりの男性に、似ているのです。
唐突ですが、わたしはあなたが直接いまのわたしを見て、絵を描いてほしいと思っています。どうでしょうか。わたしを描いていただけませんか?それとも一緒にどこかへ絵を描きに行く、というのは如何でしょうか。その前にお会いしてお話をする。それが順序というものですね。どうかしてました。ごめんなさい。
不作法なことはわかっています。ご迷惑なこともわかっています。きっと、あなたには、特別なかたがいらっしゃるに違いない。哀しいことに、そんな気がしています。諦めるべき、とも思います。でも、諦めることは困難です。あなたが好きなのです。できたら一度だけお会いして、お話をさせて頂く、というのはどうでしょうか。少しはお酒も飲めますので。