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素晴らしい偶然

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 その晩、吉野は電話帳を開いた。その分厚い印刷物を見て行くと、その住所では山中由紀夫という記載があった。ラブレターを書いたのはこの人物の娘だと、吉野は確信した。

 もう、半年も前から、わたしはあなたを愛しています。あなたがお描きになる絵も大好きです。市民美術展に出品されたあの、少女の肖像画は、多分、わたしがモデルですよね。何年か前にあなたはわたしの写真をお撮りになり、それを元に絵をお描きになったのですね。わたしは、あなたに写真を撮られたときのこと、憶えていません。春の安曇野で、あなたは北アルプスの山々を撮影していたのですね。そのとき、ついでに通りすがりのわたしも撮ったのでしょう。そのときから仮に三年が過ぎていたとしたら、いまのわたしは、あの絵の姿より三歳も、年輪を重ねてしまったことになります。
 でも、まだ五十歳にはなっていませんよ。驚かれましたか?ほんとうはまだ、二十歳の女子学生です。あなたはわたしが通っている学校の近くの会社に、お勤めなのでしょうか。この前、あなたは恐らく同僚の男性とレストラン「グリーン」でランチを召し上がっていましたね。わたしは同性のクラスメイトと、隣のテーブルで食事していました。このところ日刊就職情報の原稿が、遅れ気味なので困っているのだと、あなたは同僚のかたにおっしゃってましたね。あなたは印刷関係のお仕事をされているのだと、わたしは思いましたが、違いますか?わたしはあなたのすてきなお声ばかり聞いていたので、クラスメイトに叱られてしまいました。とても仕事熱心で、誠実な人柄を直感しました。
作品名:素晴らしい偶然 作家名:マナーモード