素晴らしい偶然
「やっぱりそうでしたか。凄い偶然ですね。仕事の用事でタクシーに乗ったら、美由紀さんのお父さんのタクシーだった、ということですね」
「そうなんですか!信じられない偶然ですね。わたしはこのお店まで、父の車で来たんですよ」
「……それは、八時五分頃ですか?」
「そうです。確か、そのくらいでした」
「じゃあ、美由紀さんの次の乗客がぼくということですね。この店の前を歩いて行って、大通りに出たところで乗りましたから」
「ということは、純粋な偶然でもないような気がしますね」
「しかし、驚きました。お父さんも驚いていました」
美由紀は血相を変えた。
「父にばれてるんですか?もう」
「いえいえ。そんなことはありません。余計なことは云ってませんから」
「そうですか……でも、この流れ、おかしくないですか?」
「えっ?何がおかしいんですか?」