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あなた待ち島

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 凛太郎と由奈。二人は学生時代に恋に落ちた。
 しかし、凛太郎は地方から出て来た貧乏学生。一方由奈は京都老舗料亭の一人娘だった。当然由奈には、料亭を継いで行く義務と責任があった。

 これは実らぬ恋。凛太郎はそんなこと初めからわかっていた。しかし、二人は愛し合った。そして悲しい別れが……。
「由奈、しばらく離れてみようか?」
 凛太郎はついに別れの言葉を切り出した。由奈からは言葉がない。いつかきっとこうなると由奈もわかっていた。ただずっと止まらぬ涙を流している。そして、ぽつりと言う。
「私、ずっと凛太郎さんを待つわ。だからお願いがあるの」
「なにを?」
 凛太郎は声を柔らかくして聞き返した。
「次に、いつか逢えた時に……、あなた待ち島に連れて行って欲しいの」
 由奈も、義経と静御前の噂がどういう物語なのかを知っていた。二人はその悲しい旅路の果てに、あなた待ち島で再会し、そして生き直したと。

「由奈、わかったよ。きっとそうしよう」
 凛太郎はそう短く答え、由奈を強く抱き寄せた。そして約束をする。
「あなた待ち島で、その時、まだお互いに好きならば……、もう一度やり直そう」 
 由奈は凛太郎の胸の中で、ただ「うん」と頷いた。
 こうして凛太郎と由奈は、別々の道を歩んで行くことになってしまったのだった。

 凛太郎と由奈、やはり実らぬ恋だった。しかし、「次に、いつか逢えた時、あなた待ち島に連れて行って欲しいの」と由奈が言った。そして凛太郎は、「その時、まだお互いに好きならば、もう一度やり直そう」と約束をした。


作品名:あなた待ち島 作家名:鮎風 遊