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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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こんばんは①<白いコートの女>

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 女性に見とれていて気がつかなかったがそこは意外にも私の住むアパートの近くであった。
「あ、いえ、私の家も直ぐそこなので、お家の前までお送りしましょうか?」
 決して下心など無かったのだが、私はかなりドキドキしながら申し出た。
「いえ、ほんとうにここで結構です。どうもありがとうございました」
 女性はそういうと深々と頭を下げた。
「あ、ど、どうも……」私も思わず頭を下げた。
 なんて礼儀正しい人なのだろう、と頭を上げると、女性の姿は跡形も無く消え失せていた。
 しかし私の目の中にはその美しさがしっかりと焼き付いていた。
 私はその夜なかなか寝付けなかった。もともと気ままな一人暮らしで、酒もそれほど強くは無いが、読書好きなのでその日のうちに寝ることは少なかったのだが。
 年甲斐も無くそわそわした私は日課にしてた鉢植えへの水遣りさえも忘れたいた――。

 その女性とは翌日にも再会した。
 場所も同じ駅から少し離れた児童公園のある角だった。
 その公園は私の気に入りの場所で休日になると本を一冊携えて、木漏れ日の落ちるベンチで半日ほど過ごすのが常だった。
 もっともこれから真夏にになると暑くて図書館へ逃げ込むのであるが。
 彼女は昨日と同じ白いコートを着ていた。ただ中に着ているものの色が昨日より少し濃い色のようだった。
 私達は昨日と同じように歩き少し話をし、彼女の名前がリリアだと言う事を知った。梨々亜とでも書くのだろうか?
 去り際に、彼女は月が美しい夜だと言った。私がつられて月を見て顔を元に戻すと。彼女はまたもや忽然と消えていた。
 本当は彼女の家を突き止めてやろうなどと思っていたのだが、気づかれてしまったのだろうか? またもや眠れない夜となってしまった。
 又、翌日も、翌々日も彼女に会うことができた。
 私達は打ち解けすばらしい会話を楽しみ、そして煙に巻くように彼女は消えた。
 次の日、私は仕事を早く切り上げ、待ち伏せの積もりで公園の手前で待った。しかし彼女は現れない。