夢の途中10 (302-352)
二人はタクシー乗り場に降りて車を拾うと、30分程行った今夜のホテル、【札幌ガーデンホテル】に乗り付けた。
ベルボーイにスーツケースを運ばせ、フロントでチェックインを済ませた。
部屋は10階のデラックスツインの部屋だった。
ベルボーイが部屋の設備の説明を一通りして出て行くと、二人は窓際で抱き合った・・・
「香織・・・」『優一さん・・・』
きつく抱き合い唇を重ねる・・・
一昨日は顔を合わせていたにも拘わらず逢う事は出来なかった・・・
【離任式】と云う夢島建設の公用であり、またまだ二人の仲を公にしていない事もあって藤野で逢う事は避けたからだ。
その代わり、公用の終ったあとでプライベートの時間を作り、札幌で一緒に過ごす事にしたのだ。
20日前に京都でとうとう結ばれた二人・・・
共に五十路も半ばに近い二人ではあったが、互いを恋しい愛おしいと思う気持ちは若者とそれと少しも変わる事は無かった・・・
二人は何時終わるともない長く激しい抱擁を続けた・・・・
二人は遅めの昼食をホテルの中華レストラン【白鳳】で摂った。
今年の夏香織と行った神戸で入った【トンチン軒】を思い出す♪
しかし今日の【白鳳】は札幌でも高級な中華レストランとして有名な名店だった。
『私、【海鮮堅焼きそば】にしようかな♪(#^.^#)』
「ああ、それも美味しそうやな♪北海度の海の幸がふんだんに使われているモンなァ♪
僕は【淡雪スープチャーハン】にしよかな♪(^。^)y-.。o○それとビール♪」
二人は一本の瓶ビールを半分ずつ呑みながら、焼きそばもスープチャーハンも分け合って食べた。
『うふふふ♪此処のお料理も美味しかったわね♪』
「ああ、【トンチン軒】に負けず劣らず♪やな? けど、高級中華では【焼き餃子】はないんやな^^;・・・」
『うふふふ♪【餃子の王将】じゃァ無いんだから♪(^_-)-☆ね?』
「イヤイヤ、王将の餃子も捨てたモンやおませんでぇ~!(;一_一)」
「で、今夜の予定は?(^。^)y-.。o○」
優一は今夜の予定を総て香織に任せていた。
今夜は丁度、香織が時々通っていたダンス教室主催の【ダンスパーティー】なのだ。
香織はダンスが踊れない優一を説き伏せて?同行してもらう事になった。
あの【小旅行】にでも行けそうな小型スーツケースには香織のダンス用の衣装や靴が入っていたのだった。
『そうね、ダンスホールが開くのは8時過ぎだからホテルを7時頃に出たら良いわね♪
それまで此処でゆっくりしましょうか?私、シャワーも浴びたいし♪』
「シャワーの後は?^^;・・・・」
『ん、もォ~~Hィ~~♪(#^.^#)知らない♪ それより、準備体操しないと、明日筋肉痛になるかもよ?^^;』
「(>_<)ああ、可能性大やなァ・・・・」
『私だって踊るの久しぶりだもの、シャワーから揚がったら十分ストレッチしないと筋肉痛になっちゃうわ(/_;)・・・優一さん、私が上から乗って背中押したげる♪(^_-)-☆』
「^^;ええ?僕、身体堅いからなァ~!(>_<)
それに・・・・香織に背中に乗られたら・・・^^;・・・」
『(;一_一)アナタ、ナニがおっしゃりたいの?』
「・・・^^;いや、まあ、そのォ~~~<(_ _)>イイスギマシタ!」
最上階のレストランの外にはチラチラと雪が降り出していた・・・
香織も優一もシャワーに入った後何事も無く?^^;、まったりとした時間を過ごし、予定通り7時に車を呼んでホテルを出た。
優一はホテルで借りた黒のタキシードに蝶ネクタイを締め、香織はコートとブーツはそのままだが、ダンスパーティー用の背中が大きくあいたオレンジ色のドレスを着ていた。
靴は向こうで履き替える為シューズバッグで持参する。
幾らコートを着ているとは言え、いきなり肌の露出の多いパーティードレスでは寒いので、大きめのストールを用意して、コートに下に羽織っていた。
ホテルの部屋で着替えた香織を見た時、大柄で身長のある彼女のドレス姿に優一は驚いた。
「香織、すごく似合ってる♪(#^.^#)
最初、オレンジのこんな派手な衣装、最初はどうかなァと思ったけど、似合ってる♪すごく似合ってるよ♪(^_-)-☆」
『(#^.^#)うふふふ♪ありがとう♪アナタにそう言って貰えると嬉しいわ♪普通の部屋だと派手に見えるけど、これから行くパーティー会場の中だとコレでも地味に見えるわよ♪
皆さん、もっと凄いんだから♪(^_-)-☆』
「しかし・・・・それに引き換え僕のタキシード、まるで七五三やな(>_<)ウイテル!・・・」
『ぷッ♪(≧m≦)確かに♪・・・いえ、大丈夫♪男性は皆似たような格好をしているからアナタだけ、浮いたりしないわよ♪(#^.^#)』
優一は香織に宥められ?車に乗り込んだ。
今夜のダンスパーティーの会場は札幌市内の小ホール『札幌常盤音楽会館』だった。
移動式の椅子を据えれば定員五百名で、ピアノ、バイオリンの独奏会か少人数のアンサンブル演奏等、クラシックの演奏会が中心だが、時にはモダンジャズのライブ演奏も行われた。
椅子を取り払えば百組以上でも一度に踊れる大ダンスホールとなる。
長い期間雪に覆われる北国の街では、屋内で体を動かす事の出来るソシャールダンスは中高年を中心に人気があった。
特に道内一の大都会札幌には愛好家も多く、従ってダンス教室も数多あったのだ。
香織は毎週金曜日藤野から2時間かけて、
夕方7時から一時間のダンス教室通いを楽しみにしていた。
香織は札幌駅から歩いて五分の『ダンススタジオ天城』に通っている。
今夜は香織の通う教室と友好関係にある他の5教室とで行う毎年恒例の
『合同ダンスパーティー』だった。
車を降りて会場のエントランスに足を踏み入れると、
既に其処は着飾った『紳士淑女』で溢れていた。
「あ、香織さ~ん、ここ、ここ♪(^.^)/~~~」
エントランスとホールの間の扉の前に教室毎に受付があり、各テーブルに二名づつ詰めていた。
『ダンススタジオ天城』と垂れ幕かかったそのテーブルに座っていた三十代の女性が立ち上がり手を振って手招きした。
『あら、純子さ~ん♪』
香織もそれに手を振り応え駆け寄る。
「あら、香織さん、ご無沙汰じゃな~い!」
受付に詰めていたもう一人の女性も香織を見とめ、立ち上がる。
『あ、富子さん、ご無沙汰しています♪m(__)m』
富子と呼ばれた女性は優一達と同じ年代に思われた。
肌の露出の多い、全身黒のラメが入ったドレスを着ていた。
恐らくラテンを得意とするのだろ。
「ホント、あれだけ毎週熱心に藤野から通って来た貴女が、プッツリ来なくなったから、どうしちゃったんだろうって皆心配してたんだからァ~!」
『富子さん、ご免なさいね、心配かけちゃって…ちょっと夏から色々忙しくって♪』
「富子さん、アッチ♪アッチ♪(^_-)☆」
純子は香織と話しに夢中の富子の肩を指でつつき、
香織の後ろに佇む優一の方を目で指した。
『あ、ご紹介しますね♪此方私のお友達で林さん、此方ダンス教室で仲良くして貰ってる吉田純子さんと及川富子さん♪』
「初めまして、林ですm(__)m」
作品名:夢の途中10 (302-352) 作家名:ef (エフ)