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夢の途中10 (302-352)

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香織の予想通り優一からの携帯メールは午前1時過ぎに来た。
嬉しかった。
毎夜交わす優一とのメールは、今や香織にとってその日の終わりを飾るプレゼントだったから♪

(うふふふ♪(^_-)-☆アナタ、ありがとう♪ 
私も愛してる♪(#^.^#)チュツ♪オヤスミ♪)



優一は翌日、午前中は孫請け企業に挨拶に行って来ると、古畑のライトバンを借りて一人で出かけた。

挨拶に行く企業は二社だけだが、昼前には熊田ファームに行かねばならない。
他に同行者を連れて行く訳には行かなかった。

昼食を一緒にと引きとめられるのを何とか振り切って、予定通り昼前に熊田ファームの駐車場に着いた。

先月暮れの大雪がまだ駐車場の隅に小山のように積まれ
ていた。
今は花を目当てに藤野を訪れる人は稀で、50台以上止められる駐車場は閑散としていた。

優一は以前夏に香織と訪れた駐車場上の売店の建物を目指し階段を上る。

香織と訪れたその日、熊田は自ら運転する運搬車の荷崩れで、脚の骨を骨折したのだ。
それから約4カ月経っていた。
昨日市役所で見た熊田は、松葉杖こそついていなかったが、優一から立ち去る時、確かに足を引きずっていた。

駐車場からの石段の道を昇り詰め、客も従業員も居ない売店の前に立った。
勿論売店は営業していないが、入口のドアは開いていた。
中に熊田が居るのだろう。

「御免下さい。」優一は中に声を掛けた。

[おお、入ってくれ。]
中から熊田の声がした。

「お邪魔します。」
そう言って中に入り、ドアを閉めると、途端に部屋の中は暗くなった。

部屋の奥はダルマストーブの前に熊田が坐り、
火口に薪をくべているようで、
眉間にしわが寄った険しい表情を薪ストーブの火が赤く照らし出していた・・・

優一が奥に入り熊田に近づく。

[よう、すまねぇなァ、わざわざ呼び付けちゃってよォ♪まァ、火の傍で暖まってくれ]
熊田は予想外の柔和な表情で優一を見上げた。

[今日、札幌に帰るのかい?]
「ええ、午後から車で。」
[なんでぇ~、ゆっくりして行けば良いのによォ・・・
香織ママだってそう言ってんじゃねぇのか?(――゛)]
熊田の表情が再び険しくなる・・・

「いえ、それは別に^^;・・・」
[別に隠さなくったて良いじゃねえか?別に人に後ろ指刺されるようなことしてんじゃねぇべ? アンタも5年も前に離婚してチョンガーだそうじゃねぇか。
まぁ、他の奴は何処まで気づいているか知んねぇが、オイラ、ここじゃ香織ママの後見人みたいなモンでよォ、アンタとママがとっくの昔、出来てるって事は百も承知なんだぜ・・・]

熊田が手にした薪で火口をつつくと、パラパラっと火口から火の粉が舞った。



「そうですか、熊田さんには全部お見通しだったんですね・・・」

[・・・・(--〆)オイ、これからオイラの云う事に正直に答えろ!
その答えによっちゃオイラ、オメェをただじゃ置かなねぇぜ!(-_-)/~~]

熊田は火の点いた薪を優一に突き付けた!

[・・・(――〆)おめぇ、この後ママとどうする気だ?]

「・・・(・_・;)香織さんとはまだ先の事まで詳しく話し合っていませんが、
僕が定年になる6年後には彼女と此処で穏やかに暮らしたいと思っています。」

[(ーー゛)ナニ?6年もママを此処で待たせるのか?
人間先の事何ぞ分かるもんか!
アンタ、今度夢島の役員になるって云うじゃねぇか?
だったら、経済的にやって行けねぇ訳ねぇべ?
ママに此処の商売辞めさせて、東京だろうが大阪だろうが、とっとと連れて行って所帯持てば良いんじゃねぇのか?
あ~ん?(;一_一)]

熊田は優一を睨みつけ気色ばんだ。

「熊田さんのご意見も尤もですが、我々はもう50代も半ばです、若い人が結婚するのとは少し違うと思うんです・・・
其々今まで築いて来た生活の基盤もあります。
それを一度に変える事は方々に摩擦を生むと思うんです。」

[・・・(;一_一)てめぇ~、香織ママとの事はアソビだって言うのかい!
惚れ合ったモノ同志、一つ屋根の下に暮らすのが一番自然じゃねえのかい!]

「アソビとは心外だ!貴方の云う事も分からないではないが、僕たちは僕たちのペースでやって行こうと思ってます。」



熊田は優一の気迫に押され我に戻った。

[・・・・(・_・;)そうかい、そだよな・・・
すまねぇ、余計な事を言っちまった、気を悪くしねぇでくれ・・・
ただ俺は、香織ママに幸せになって貰いてぇと思ってな・・・・]

「・・・いえ、答えは香織さんともっと話し合ってからにします。
熊田さんのおっしゃる通り、同じ屋根の下で暮らすのが自然な気もしますし・・・
ただこれだけは言えます。僕も香織さんも真剣です。
ちっとも浮ついた気持ちでの付き合いではありませんから・・」

[うん、その言葉を聞いて安心した。・・・
なんてか、香織ママは俺にとって妹みたいなもんだからな^^;・・・
つい余計な事まで言っちまうんだ。林さん、許してくんな?]

(・・・熊田さん、貴方の気持ちは分かってますよ♪
貴方が香織の事を妹以上に思っていてくれた事を・・・)

「はい、分かりました。許せだなんて言わないで下さい。
また落ち着いたらご報告しますから・・・
何れは僕も此処で熊田さんに世話になれますか^^;?」

[ああ、良いて事よ♪(^。^)y-.。o○ 
弟と妹がいっぺんに出来て嬉しいぜ♪
今度来る時はゆっくり呑もうぜ♪
アンタ、イケル口だろ?]

「ええ、結構イケル口ですから♪(#^.^#)」

優一は熊田の農場を後にした。

雪に埋もれた丘陵地が、雪晴れの陽の光で眩しかった






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章タイトル: 第35章 ムーンフラワー 2008年冬
-----------------------(p.327)-----------------------

翌日の12時過ぎに香織の乗った藤野からの列車が札幌駅に着いた。
香織は丈の短い白いトレンチコートを着ている。
コートの下は赤と青、黄色の花がらのワンピース、チャコールグレーのロングブーツを履いて、手には小旅行にでも出かけるようなキャスター付きの小型のスーツケースを引いていた。
改札を出た処で優一が出迎える。
『お待たせ♪(#^.^#)』
「ああ、お疲れ♪(^_-)-☆」
香織と優一は列車の中でも逐次携帯で連絡を取っていた。
改札から出た香織を軽くハグする優一。
熱い抱擁まではいかないものの、二人の間に笑顔が溢れた。
香織のスーツケースの取っ手をさも当たり前のように引き取る優一。
スーツケースから離れた香織の腕が優一の空いた方の腕に絡まった。
『アナタ、お食事は?』
「勿論まだやで。ラーメン横丁でも行くか?」
『う~~ん、出来たら先にホテルにチェックインしたいの・・・だって、スーツケースが邪魔だし・・』
「そやなァ、そうするか。少し遅くなるけどホテルのレストランで食べよか♪(^。^)y-.。o○」
『ええ、そうしましょ♪(#^.^#)』