掌編小説 「雪の鳥」
すべてを失ったと悲しむ青年。夢はもう戻っては来ないのだと、雪の鳥の行方を目で追うも、それは有無を言わせぬ速さで飛び去り音もなく消えゆく。
その足元に、突然異音が微かに伝わってくる。
ピキピキピキッと折れ線グラフ走り
わずかな裂け目より澄みし水溢れくる
そろそろと滑広す清き雫
雪の鳥 舞い戻りて喉を潤し
夢新たにし 遥かをめざす
青年の足元の氷が割れ、内側から澄んだ水がひたひたと滲み出ていくのを目にした。
何もかもが雪に覆われ、また冷たく厚い氷に覆われていると思っていたのに、その中には命の水が息づいている。その不思議に呆然とする青年。
作品名:掌編小説 「雪の鳥」 作家名:ゆうか♪