掌編小説 「雪の鳥」
その世界に終わりはなく、不動のモノが生きていることを知らせてくれているのか、静かなる命の音が聴こえてくる。じっとその音に聴き入る青年。
――やがて青年の目の前には、遠く飛び去ったはずの雪の鳥がなめらかに滑降して現われ、その清らかな水を飲み、その頸を伸びやかに天に向け喜びを謳う。そしてまた、今度は高らかな歓声を響かせながら空へ舞い上がった。
「ああ、まだ生きている。生きているんだ! 生きている限りまだやれるんだ!」
そう叫んだ青年は、わずかに頬を上気させ、もと来た道を文字通り一歩一歩踏みしめるようにして、ゆっくりと歩き出した。
了
作品名:掌編小説 「雪の鳥」 作家名:ゆうか♪