掌編小説 「雪の鳥」
彼は見渡す限りの雪原にしばし目を奪われ、その景色の中で吹きすさぶように舞う雪の華に、己の夢が消える様を見たような気がした。
「ああ、これまでの夢が消えていく――」
絶望というものに占領された心はただただ虚空で、これ以上の悲しみはないと思っていた。そんな彼の頬になぜか一縷の涙が伝う。
その時突然、はるか彼方に羽音を聞いたように思えて顔を上げる――。
バサバサバサッと透風震わす
銀羽躍らせ大いなる空へ舞い
氷風裂きて一瞬にして翔けゆく
帰っては来ぬか 雪の鳥
夢と共に 去りゆくのか
作品名:掌編小説 「雪の鳥」 作家名:ゆうか♪