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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・参】幸せ捜査網

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「つったく…息子使いの荒い…乾闥婆?」
まだ咲かない桜の木の下にいる乾闥婆を見つけた
「なぁにやっとんだお前; 風邪引くぞ?;」
「…京助」
雨で顔に張り付いた髪を指で耳にかけ乾闥婆が京助を見上げた
「風呂、入ってないんだろ? 俺で最後だったからいってくれば?」
さしていた傘の半分に乾闥婆を入れて京助が言う
「…そうですね」
乾闥婆が笑顔を返した
「…南の言ってたジンクスか?」
京助が桜の樹を見上げた
「最後に咲く桜の花って言っても…わかんねぇよなぁ; 四葉のクローバー見つけるよか難しいと思うぞ」
まだ蕾もつけていない桜の樹は雨を受ける葉もまだ充分に育っていなく見上げれば曇った空が見えた
「…着替え俺のタンスから適当に持ってけな? …でかいと思うけど;」
京助がポケットに手を入れて言う
「ええ…有難う御座います」
そう言って笑顔を向けると乾闥婆は家の方に歩いて行った
「…なんだかなぁ;」
頭を掻いた京助が再び桜の樹を見上げる
「…ジンクス…ねぇ」
京助はボソッと呟くと石段に向けて足を進めた

「桜の樹…見てたの?」
玄関を入るなり乾闥婆に声を掛けてきたのは矜羯羅
「…そうですが何か」
しれっとして乾闥婆が答える
「昼間の話?」
矜羯羅が聞く
「…どうでもいいじゃないですか。貴方には関係のないことでしょう」
「…君だけのせいじゃないでしょ?」
髪を絞って水分を抜き靴を脱いで矜羯羅の横を通り過ぎようとした乾闥婆に矜羯羅が言った
「…っ…」
乾闥婆が矜羯羅を振り返る
「もうそろそろ自分を許してあげても…いいと思うんだけど」
「貴方に…言われたくありませんよ…貴方だって…」
矜羯羅の言葉に乾闥婆が返す
「貴方だってそうじゃないですか」
今度は乾闥婆の言葉に矜羯羅が目を大きくする
「貴方だって…自分を…っくしょっ! …すいません」
言葉の途中でくしゃみをした乾闥婆が口元を手で押さえたまま小走りで奥に入っていく
「…僕も…ね…」
矜羯羅が笑みを浮かべて天井を見た