【第七回・参】幸せ捜査網
「コレがおそらく最後だろうと思われる花か」
緊那羅が取ってきた桜の花をしげしげと見つつ京助が言う
「うん…たぶんそうだっちゃ」
泣き止んだもののまだ目が赤い緊那羅が答える
「まぁ…どことなぁく濃いようにも思えるけど…さぁ…;」
上下左右くまなく花を見て京助が言う
「…その花京助にあげるっちゃ」
「は?」
緊那羅が言うと京助が間抜けな顔で答えた
「だってひとつしかないし…乾闥婆も矜羯羅も同じくらい待ってたのにどっちかだけになんて…あげられないし…だから京助が…」
緊那羅が苦笑いを向けた
「…お前は?」
花の茎を持ってくるくる花を回しながら京助が緊那羅に聞いた
「私は…いいっちゃ…さっきの御礼ってことも含めて京助がもらってくれれば…」
一部分が濡れている京助のズボンをチラッと見ながら緊那羅が言った
「…まだしびれてるっちゃ?」
「だぁッ!!; 突付くな!! 触るなッ!!;」
長時間座っていたせいでしびれているらしい京助の足に手を伸ばした緊那羅に対し京助が怒鳴る
「…しかし…どうしたもんか…ねぇ」
桜の花をくるくる回して溜息をつき京助が言った
「…なんかいいアイディア(ネイティヴに)ないもんか…」
桜の木に寄りかかり上を見上げると静かな風にもかかわらず花弁が落ちてくる
「…おお!!! グットアイディア!! ナイス!!」
京助が声を上げて立ち上がると緊那羅が驚いて目を丸くした
「…足…大丈夫なんだっちゃ?;」
緊那羅が小さく聞くとひとつ間を置いて京助がしゃがみこんだ
作品名:【第七回・参】幸せ捜査網 作家名:島原あゆむ