【第七回・参】幸せ捜査網
桜の木の周りを取り囲むようなカンジに腰を下ろした三人の手には湯気のたつ紙コップがあった
「花見茶ですね」
朧月のやわらかな光に照らされた桜の花を乾闥婆が見上げて呟いた
「…そうだね」
矜羯羅がボソッと言う
「綺麗だっちゃ…」
桜の木を見上げた緊那羅が自然と笑顔になった
「あ…」
緊那羅が何かを見つけ声を上げた
「どうしたの?」
矜羯羅が聞く
「…あの枝だけ…まだ蕾っぽいような…」
下枝の内側下からでなければ見えないような場所を緊那羅が指さした
「…あれがもしかして…」
乾闥婆が立ち上がり見上げる
「一番最後の花…だっちゃ?」
緊那羅も立ち上がると数歩後ろに下がって桜の木を見た
「…最後の花は色が濃いとか言ってなかった?」
矜羯羅が座ったまま顔だけを乾闥婆に向けた
「…咲けばわかりますよ」
乾闥婆が言う
「…見上げてばっかいると首…疲れるんじゃない?」
桜の木を見上げたままの乾闥婆と緊那羅に矜羯羅が言った
作品名:【第七回・参】幸せ捜査網 作家名:島原あゆむ