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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・参】幸せ捜査網

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「おかえりなさい」
眠そうにあくびをしつつ帰宅した京助が布団よりも何よりも先に桜の木へ向うと眠そうな京助とは正反対にいつもどおりの乾闥婆がおかえりと言う
「…眠くないのか?;」
京助が目尻に溜まったあくび涙を拭いながら聞く
「ええ…大丈夫です」
乾闥婆が笑顔を返す
「だいぶ花開いたな」
京助が見上げた桜の木は白とも薄紅とも取れる花を広げた枝に惜しげもなく咲かせていた
「今日は暖かかったですからね…一斉に咲きました」
一本の太い枝に腰掛けていた乾闥婆(けんだっぱ)が側にあった桜の花に触れた
「でもまだ…最後の桜の花は咲いてねぇのか?」
出掛かったアクビを噛み殺して京助が聞くと乾闥婆が頷いた
「今日も…貫徹するんかお前」
眠さのピークがきたのか目をこする回数が増えた京助が乾闥婆を見上げた
「ええ…咲くまでは…貴方は今すぐ寝た方がいいと思いますよ」
大あくびを数回繰り返して伸びをする京助に乾闥婆が言った
「…ありがとうございました」
小さく聞こえた乾闥婆の感謝の言葉に微笑んだ後京助は家に向って歩き出した

春先によく見られるという朧月が空に浮かんだその日の夜
「…迦楼羅が心配してるんじゃないの?」
緊那羅から差し入れされた厚手のタオルを膝にかけていた乾闥婆がゆっくりと下を見下ろした
「…貴方こそ制多迦が探しているんじゃないんですか?」
丁度 乾闥婆の腰掛けている枝の真下に矜羯羅が腕を組んで木に寄りかかっていた
「二日間【天】に戻ってないみたいだけど」
乾闥婆の質問には答えず矜羯羅が言う
「…貴方には関係ないでしょう」
愛想のない返事を返した乾闥婆を矜羯羅が見上げる
「相変わらず可愛げないね」
「貴方に可愛いどうのこうの言われる筋合いは全く皆無でしょう?」
にっこり(でもどことなく怖い)笑顔で言った矜羯羅に対し乾闥婆もにっこり(でもやっぱりどことなく怖い)笑顔で言い返した後にはだんまりが続いた
たまに聞こえる車の通る音や猫の喧嘩する鳴き声そして波の音と風が桜の木の葉の間を通り抜ける音

「…似てるよね」
矜羯羅が口を開いた
「…ええ…僕も不本意ながら…そう思っています」
乾闥婆が言う
「僕と君は」
「僕と貴方は」
そして同時に言った
「…どうせ君も南とか言う京助の友達が言ったジンクスとかいうのを信じてるんでしょ」
矜羯羅が桜の木に寄りかかりながら微笑んだ
「貴方こそ」
乾闥婆が桜の花弁を一枚取るとそれを風に乗せた
「願いもきっと同じ様なことなんだろうね」
クスリと笑いながら矜羯羅が言う
「僕は貴方に自分を重ねていたように思えます」
乾闥婆が言った言葉に矜羯羅が驚いた顔で乾闥婆を見上げた
「…自分に似ている貴方が…正確には自分…僕自身が僕は大嫌いなんです」
乾闥婆が静かに言う
「だから…喧嘩売ってたってわけ?」
矜羯羅が聞くと乾闥婆が躊躇いもなく頷くと矜羯羅が俯いて肩を震わせ始めた
「ッ…あはははははははは!!!!」