恋は未完のままで
ピカソの青の時代のような絵。
ピカソは貧乏だった。その時にやっと買えた絵の具が青色。それを多く使って、実にもの悲しい絵を描いている。
「涼太君、ピカソの青の時代の絵って、結構大胆なことを言うわよね。それで何を描くつもりなの?」
「それを、ずっと探してるんだけど」
涼太はぶつぶつと答える。
しかし、愛沙はそんな涼太を、潤んだ特別な目でじっと見つめてくる。そして唐突に囁く。
「じゃあ、私を描いて」
涼太はびっくりした。男子生徒の憧れの的の愛沙を描くなんて、想像も及ばない。
「えっ、良いの?」
涼太は思わず聞き返した。
「もちろん良いわよ、じゃあ、ここへ座るからね」
こんな会話の後に、涼太はスケッチブックに恐る恐る愛沙を鉛筆で素描し出す。
しかし愛沙をスケッチし始め、すぐに気付くのだ。椅子に座ってポーズをとる女学生愛沙。実に大人っぽくて色っぽい。
長い黒髪がさらさらとしている。二重の瞳が潤んでいて、唇はピンクに濡れている。しかし、どちらにしても悪戯っぽい。
白いブラウスの奥に潜む胸元。それは深そう。
さらに紺のスカートの裾から伸びる足は細くて長く、美しい。身体全体から小悪魔のような色香が漂ってくる。
涼太は、何か魔法をかけられたように、不思議な気分にさせられてしまった。それでも必死になって、小悪魔の愛沙の絵を描き続けた。