恋は未完のままで
高校二年生のその日以降の十代、二十代。
涼太の青春は、それはそれなりに楽しい思い出ばかり。しかし、「二人の青春への旅立ち」と記されてある通り、なぜかすべての青春の始まりが、この一枚の絵からと思えてならないのだ。
そして、涼太は感じている。
二人の青春は不完全燃焼のままで・・・・・・まだ終わっていないのだと。
涼太は、もう四十歳に手が届きそうな年代。
それにもかかわらず、青春の恋は未完のままで、次の大人の世界へと、今もって抜け出せていない。そう思えてくるのだった。
涼太は片付けの手を休め、もう一度じっくりとその絵を眺めてみた。
色は随分とくすんできている。
しかし、その女学生の頬はまだ紅潮している。
唇はピンクのルージュを差したように薄紅色。長い髪は艶(つや)やかに黒い。女学生の顔の表情が柔らかく描かれている。
だが、絵らしいのはそこまで。女学生の白いブラウスは少し乱れ、そして胸の辺りが痩せ過ぎている。
これを見ていて、涼太は思わず吹き出してしまった。
「ホント、今思えば、これ、傑作な作品だよなあ」
涼太はそんなことをぽつりと呟いた。そして、その当の女学生のことが気になってくるのだ。
「一体、愛沙(あいさ)は今、どうしているのだろうなあ?」