恋は未完のままで
「愛沙は女流画家として、世間から期待されているし、もう泣くなよ」
涼太はそんなピント外れなことを言って慰める。
「涼太君、やっぱり私達の二人の青春は・・・・・・終わらせられないわ、このままの青春にしておきましょう」
愛沙は、こんなことを泣き声で言い出した。
涼太はびっくりした。二人の青春を終わらせるために、その決着として、抱いてと愛沙に求められ抱いたはず。これで愛沙のことは忘れられると思っていた。
愛沙のこの心変わり。それは涼太の妻が美鈴であったことなのかも知れない。
「しまったなあ、これはひょっとすると、もっと鬱陶(うつとう)しいことになっていくかもな」
涼太は正直不安になってきた。
こんな結末になるのであれば、愛沙を抱かなかった方が良かったのかなあとも思うのだった。
一方愛沙は、涼太の妻が美鈴だと知って、反対に涼太とのさらなる逢瀬を企み始めている。
そして二人の青春は、まだ終わらせないと心変わりしてしまったようだ。
「もう、そろそろ帰るよ」
涼太はなにか疲れてきた。愛沙も今日は諦めたのか、服を着出した。
そんな時に、玄関がピンポーンと鳴ったのだ。