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恋は未完のままで

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愛沙は少し慌て出している。
多分女の勘なのだろうか。愛沙が「はーい、どちら様でしょうか?」と、インターホーンに出る。涼太にも聞こえる。
するとインターホーンの向こうから、信じられない声が。

「あのう・・・・・・霧澤なんですが」

涼太は心臓が飛び出すほど仰天した。
それは、妻の美鈴。
さらに落ち着いた口調で、インターホーンの向こうから言う。

「涼太がお邪魔していると思いますが、引き取りに参りました」

愛沙も、びっくりしている。そこまで見透かされているならば、もう嘘を吐けない。
「はい、おられますが・・・・・・」

愛沙はなんとなく口ごもる。多分、「どうして、ここへ?」と聞き返したかったのだろう。
美鈴はそんなことまで察してしまっているかのように続ける。

「涼太は、私の青春ですから、返して下さい」
そして美鈴は、インターホーン越しに涼太に訴えてくる。

「涼太、今からもう一度、四葉のクローバーを探しに連れてって、ここで待っているから」

涼太は慌てた。
しかし、愛沙はその割には慌てていない。

「涼太君、すぐに行って、私は大丈夫だから」
気丈に、そんな気遣いまでする。

「ああ」と返し、涼太は玄関へと向かった。
そんな涼太の背中に、愛沙の小悪魔な声が投げ付けられてくるのだった。

「涼太君、私達二人の青春はまだ終わってないわよ。恋は未完のままで・・・・・・左はキープしておくから」

おわり

作品名:恋は未完のままで 作家名:鮎風 遊