恋は未完のままで
「おいおいおい、どうしたんだよ?」
「涼太君、あの時は、まだ女学生だったでしょ、私はもう女に成長したのよ、裸の私を描いて頂戴」
愛沙の勢いが止まらない。そして裸で籐の椅子に座り、背筋を伸ばしている。
涼太はこんな年齢にもなった。別に女性の裸に驚きはしない。
しかしそれ以上に、愛沙が美しいと思った。
あの高校二年生の時に触れた愛沙の乳房は、より豊満となっている。肉がそれなりに付いていて、ふくよかな体型。だが、くびれるべき所はしっかりとくびれている。そんな成熟した女の肉体、そんな色気が充分に伝わってくる。
涼太は差し出されたキャンバスに直にデッサンをした。後で愛沙が色付けをするつもりなのだろう。
「多分出来上がりは、ルノワールの裸婦のようになるかもな」
涼太は愛沙の女の肉体に圧倒されてしまったのか、そんなことを言ってしまった。
「いいのよ涼太君、そこに涼太君の感性が盛られていれば、太くってもね」とねちっこく言い返してくる。
しかし、涼太はできるだけさらっと描き上げ、その絵を愛沙に手渡した。それを見て、愛沙は寂しげに呟いた。
「涼太君、ありがとう、だけど、私達二人の青春は・・・・・・これで終わってしまうのよね」