恋は未完のままで
愛沙が左の乳房と右の乳房、涼太にどちらが好きかと尋ねてきた。
左か右か?
涼太はそんな不思議なものに優劣が付けられない。要は、どちらも好きなのだ。
「ねえ、言ってみて」
愛沙が小悪魔のような目をして迫ってくる。
涼太は追い込まれて、遂に一言答えてしまった。
「左かな」
愛沙はこれを聞いて、満足そうに一人結論付ける。
「左なの、ふうんそうなんだ。じゃあ涼太君のために、左は大事に取っておくわ」
そして男を征服したような顔付きとなり、「涼太君、これでわかったでしょう、おっぱいがどういうものかが」と断じる。
涼太はまだ一連の感動から目が醒めていない。そのためか、「ああ」としか返せない。
一方愛沙は、さっさとブラジャーを着け直し、はだけたブラウスのボタンをとめ出す。高校二年生の涼太は、ただそれを茫然と眺めているしかなかったのだ。
愛沙は元の利発な女学生に戻った。
涼太が描いた愛沙のスケッチ。
愛沙はそれを手に取り、いきなり水彩絵の具で淡く色付けし出した。