つぶやき詩集 (1)
そして、それから・・
あの声、あの言葉に感動した日は
遠い夜空の星の瞬き
あの唇、あの吐息に心乱れた日は
夜の戸張に紛れている
あの肌、あの温もりを恋しく想う日は
もう、戻っては来ない
あの音もその感触もこの心のうずきも
遠い記憶の扉を開けてくれない
時間が停まってしまったような
闇夜に一人佇んで
灯りの消えた走馬灯を巡らせる
あの声は、あの唇は、あの肌は
心の奥底へ入り込んだまま
その濡れた吐息に乱される思いは
もうない
その柔らかい肌に触れたこの手は
新しい感触を探し求める
もう戻ることのない記憶は
夜の戸張に閉じ込めてしまおう
そうなんだよ、記憶の扉に鍵を
掛けてしまおう
すぐそこに新しく、清らかな流れが
来ているのだから
もう、こだわりを捨てよう
もう、思い入れを捨てよう
そして、後ろに残して来たものへの
未練は捨ててしまおう
そして、見えてくる未来へ
己れを置いてみるんだ
そして、そして、そして
それから・・・・
作品名:つぶやき詩集 (1) 作家名:Riki 相馬