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告白

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奏多は数学の授業に全然ついていけていないらしい。
俺も「数学は得意だ」と話した記憶は一度たりともないが、まあ答えられる範囲の質問であれば答えたり説明したりと、俺たちは勉強を始めた。




「あー、腹減った。数学体力いる」
「お疲れ。じゃあ飯食ったら?俺は帰るし」
「えー…」

うなだれると、奏多はリビングへと降りていき、少しして戻ってきた。
夕飯を食べていかないか、とのことだった。
最初は遠慮したが、ご両親共々勧められてしまったので有難く頂くことにした。

奏多の人当たりの良さは一家揃っての血らしく、食卓は温かかった。
そして育った家や家族構成、家庭の雰囲気など、奏多の育ってきた環境に触れるのは思えば初めてだったため、その場所でみる奏多は少し新鮮に思えた。


「居座った挙句に夕飯まで頂いて悪かったな」

いいと断ったのに、奏多は途中まで送るからと一緒に家を出た。

「そんなことないって。親もごちそうできて喜んでたよ」
「そうか?ならいいんだけど」

5月の終わり、そろそろ梅雨に入りそうな時期を迎え、夜の外は少し湿っていた。

「なんか今日はお前との距離が大分縮まった気がするよ」
「え、なんで」
「初部屋、初食卓、初両親と対面?」
「なんで笑うんだよ」
「いや、これじゃ恋人の付き合いたてみたいだよなあと思って」

俺が笑いながらそう言うと、なぜか奏多は俯いた。
冗談が外れたかと思い「ごめん冗談だって」と謝ると、そうじゃないと小声で言うのが聞こえた。


それから奏多は妙におとなしくなってしまい、会話なく俺らは夜道を歩いた。
俺の少し後ろを歩く奏多がいったいどんな顔をしているのかと考えながら時間は過ぎ、別れ際に「また明日」と言葉を交わしたくらいだった。




作品名:告白 作家名:ハルユキ