告白
「なあちょっと長くなかっ……?」
トイレから戻る俺を見てニヤニヤしている奏多の隣へと座る。
さっき俺が座っていたのは勿論テーブルを挟んだ奏多の向かい側だ。
「な…に」
奏多は少し体を仰け反らせながらも急に隣に来た俺の顔を、驚いた丸い目をして見ている。
「くっ、いいねその驚いた顔。可愛いよ」
思った以上に硬直してんな、奏多。
予想以上の反応に面白くなりつつ、俺は背中から彼の肩に手を回す。
「そのままこっち見てて」
ゆっくりと顔を傾け近づける。
「…………」
おい、硬直し過ぎだろう。どうした奏多。
「おい、本当にキスしちゃうよ」
「…………」
奏多………?
さすがにいたたまれなくなった俺は肩から手を離し奏多から離れた。
「だ、」
「え」
「誰も実践しろとか言ってない!」
「……」
良かった奏多が喋った動いた。
「いい作戦でしょ。さりげなく席を移動した」
「いいっ――……。俺には出来ない。あんな…」
思い出したのか顔の熱を再発させる。
「そうだろ」
「え」
「そうだよ。タイミングなんて人それぞれだ。キスだってデートプランだってセックスだって、やり方なんて人それぞれだ。だからいいんだよ。奏多は奏多の思うままにすれば」
「そっか。そうだよな」
そう言って少しの間があったが奏多はやっと笑顔に戻った。
「さすが、いいこと言うなあ、龍は」
だけど、そう言う奏多の笑顔は少し悲しそうにも見えた気がした。