告白
「……見えちゃったんだよ、悪かったな」
「ねぇ、相談があるんだけど」
本当にコイツはマイペースに話を変える…。
「何?」
「………キスってさ」
「ブッ――げほ、ごほっ」
貰った飲み物を早速頂いていた俺は出てきたワードに完全に動揺し、むせた。
「大丈夫?」
「っ――…お、おう」
顔を近づけ目の前で首を傾げる奏多。
…駄目だ、あの後から。敢えて気づかない、そうじゃないと言い聞かせてきてはいたが、俺はどうしても奏多の唇に目がいってしまう。そして動揺する。
「付き合ってたらさ、キスってやっぱりするだろ」
「まあ…するよな、普通」
「………どういうタイミングですればいいんだろう」
「…………」
そもそも俺らは、わりと一緒にいるのに恋愛に関する話題が出ることが無かった。
だからか気まずいのだろう。奏多は少し照れくさそうに話す。
「おまえ本当に初心者みたいなこと聞くんだな」
「なっ」
ただでさえ遠慮がちに話す奏多の顔がますます赤くなる。
追い打ちをかけるようなことを言ってしまったと後で気づく。
「だから親しいおまえにならって頑張って聞いたんじゃん!」
案の定、奏多はむきになって怒鳴った。
「だよな、ごめんごめん。いや意外だったからつい」
「意外かな?」
「うんまあ。例えばどんな時よ」
「え、例えば…例えば…一緒に帰った時とか」
「そりゃあ別れ際でいいんじゃない?」
「デート…」
「それも別れ際とかでいいんじゃない」
「……部屋。こうやってどっちかの部屋で遊ぶときとか」
「それはー、……したいと思ったらすればいいんじゃないか」
「どうやって?向かいあって座ってるのにわざわざ隣とか行くのか?」
「うーん」
「なんかおもむろにしたいみたいでカッコ悪くない?」
「……便所いきたい。トイレ貸して」
「うん。部屋出て真っ直ぐ」
言われた通りに行き、トイレに入った俺は堪えていた分噴き出した。
アイツどんだけキスしたいんだよ。
真面目な顔して、どんだけ頑張ってるんだよ、女と付き合うのに。
奏多と恋愛話をすることもほぼ初めてに近いし、なんだか新鮮で可笑しかった。
それに恋愛の悩みを話す奏多にも新鮮で、可愛くて可笑しかった。
でもあんなに真面目に相談してるんだ。これは何とか解決を導いてあげたい。
俺はトイレで一人気合いを入れ、部屋に戻った。