告白
咄嗟のことに俺は頭が真っ白になった。が、奏多はそうでもないみたいだった。
少し細めた目で俺をただ真っ直ぐに見ていたよう、な気がする。
何しろ頭が真っ白だったと本人直々に認める俺には、その記憶は曖昧なものでしかない。
「……寝てたんじゃなかったんだ」
とにかくその空気を紛らわすべく、俺は言葉を発した。
「うん。噂の現場を覗いてた」
「なんだそれ」
「………」
奏多は黙って俯く。まただ。
「なあ。おまえ最近そうやって俯い…」「実は俺にも」
「え?」
そして話を遮ろうとする。
「俺にも、彼女ができたんだ」
「………へぇ、そうなんだ」
驚いたのもあったが、いきなり話題を振られたので咄嗟に返すことしかできなかった。
「でも俺初めてだからさ、結構どうしたらいいのかわかんないんだよね、付き合うのってさ」
「うん」
「だから色々教えてね」
「うん。……え?」
俺が過去女子と付き合った経験を語ったことはないのだけど、何を教えればいいんだ。
「じゃあ、俺帰るわ」
奏多は思い切り椅子から立ち上がり、教室を出ようとした。
なんだか無理にテンションをあげているように見えるのは気のせいだろうか…?
「…今からなら一緒に帰れば」「は?何言ってんだよ。俺もお前も彼女と帰るの!」
「?…おい、俺もって」「じゃ、また明日なー」
そう言うと、いつもと変わらぬ笑顔を見せて奏多は教室を出て行った。