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仕事伝説 ―コンビ誕生!!―

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 しかし勢いが良すぎ、止まる事が出来ない。そこを新たな番兵が狙う。
「危ねーっ!?」
「ぎゃッ」
「のおっ?!」
 こちらは止まれない。その勢いのまま、新手にぶつかった。可哀想に、相手は伸びてしまっている。
「いつつつ・・・ありがとな、止まれた」
 伸びてしまった番兵に礼を言い、再び駆け出す。
「うおおお!!!」
 向かってくる三名の番兵達に、拳で突進を仕掛け――ようとして、つま先が足に引っ掛かった。
「ゑ?!」
 相手はもう目の前である。
 ディークは慌てて、とにかく身体を支えるものに手を伸ばした。掴んだのは、二人の番兵の足だった。
「☠☢〄?!」
 それでも顔面からぶつかる。とばっちりで、足を引っ張られたその二人も、背中をしたたかに打った。
 もう一人の番兵は、イリスが鳩尾に肘鉄を食らわせ、気絶させた。
「何やってるのよ、ディークッ!!」
「不可抗力だっ!!!」
 この土地独特の地形が、こちらの思ったような動きをとらせてくれない。
 それでも洞窟へ――いや、採掘坑へと向かう。
 番兵が槍の石鎚を向け、ディークの頭目掛けて薙ぐ。
「うぉっとぉ!?」
 しゃがんで避ける。――と、後方で人の倒れる音。ディークの背後から、忍び寄っていた番兵だった。槍がディークに隠れて見えず、仲間の攻撃を避け切れなかったらしい。
「同士討ちは気を付けろよっ!!」
「うわーっ!?」
 思い切り、槍を薙いだ番兵にスクリューを喰らわせる。番兵はくるくると回り、仲間達もそれに巻き込まれ、くるくると回る。まるで舞踏会。シュール、ではあるが。
「あーいかん、俺も目ェ回ってきた」
「だから貴方は何やってるのよッ!!!」
「不可抗力だっ!!多分・・・」
 ふらふらしながらも、ディークはイリスが持ってきていたローブを、大きく掲げた。
 それが、合図だった。石のつぶてが、番兵目掛けて飛ぶ。
 奴隷にされ、耐えられずに逃げた者達が、ここぞとばかりに石を投げつける。
 戦力に劣っても、集団で、簡単に出来る攻撃だ。
「いいぞいいぞーっ!!あたっ!!」
 ディークの頭に、げんこつほどの石が当たる。
「俺に当ててどーするーっ!!行くぞーっ!!!」
 ローブを振り回し、ディークは叫んだ。今の騒ぎで、番兵達のほとんどは外に集まっている。中にいる奴隷を助けるなら、今しかない。
 ディークとイリスは、先に穴の中へと入った。
 外の番兵の大半は気絶。残りは石投げ部隊の一部――シュワルツに任せている。
 穴から出たところを、番兵に襲われる心配は無い。
「早く逃げろ!!お前達の仲間が待ってる!!!」
 大声で叫び、今まで働いていた奴隷達を誘導する。
 各々、喜びの声を上げながら外へと出て行く。
「よし、イリス。俺達も行くぞ」
「ええ。でも、あの男が見当たらないわ」
「!!」
 坊主頭の男。彼がおそらく現場責任者なのだろうが、姿を見ていない。
「とにかく、今は外へ抜け出す事が一番だ!その後で捕まえてやる!!」
「威勢が良いな」
「!!ディーク!」
 穴の出入り口。そこに、坊主頭の男が、何かを持って立っていた。
 一つはたいまつ。一つは、紐が付いた丸い物。
「動くなァ!!動いたら、これに火を点けるぞ」
 爆弾。紐は導火線。球体には火薬が詰まっている。
 ここに穴を空ける際にも、使ったであろう代物。
 動きを止めるしかない。外の石投げ部隊も動きを止めている。
「お前達は、ここで死んでもらう。なに、奴隷なぞ、すぐにラースさんが新しいのを連れて来る」
「人を道具扱いしやがって・・・!!」
「何とでも言うが良い、青二才。お前達に未来などないのだからな」
「く・・・っ!!」
 歯を食い縛る。火を点けられたら、もう終りだ。
(どちらにしろ、殺されるっていうのによ!!!)
「ディーク」
 服の裾を引っ張りながら、イリスが囁いた。
「助かる方法が、一つあるわ」
「!」
 ぼそ、とその方法をイリスは告げた。
「・・・よし、やろうじゃねぇか」
 ディークに、笑みが零れた。
「死を覚悟したか?仕事屋」
「・・・そうだな・・・・・・なワケねェだろ!!!」
 ディークは走り出した。男が導火線に火を点けようとする。
「〝イリス・バルトが名に於いて、我が名に欲す。名に示されしその力、我が前に現れたまえ――定魔名(じょうまみょう)よ〟!!」
 イリスに呼応し、緑色の光が彼女を包み込む。そして、掲げた右の拳に集束していく・・・!
 定魔名(じょうまみょう)。魔術で自らの名前を付け、精神の安定を図り、優れた戦闘能力を発揮させる高度な技術。イリスの名は、魔術そのもの。かつての名、リュカス・ウェッジも定魔名だった。彼女は魔術師に名を付けて貰う事で、人並み以上の能力を持っているのだ。
 魔術の光が、イリスの拳から放たれる。ディーク目掛けて。
「俺は伝説になるんだ!!こんな所で死んでたまるか!!」
 ディークは吹き飛ばされ、一気に坊主頭の男に肉薄する。
「何・・・っ!?」
「うおりゃあああ!!!」
「ぐは・・・!!?」
 ディークの蹴りを受け、男は気絶した。

 坊主頭の男、そして番兵達を縄で縛り、ディークは手をはたいた。
「よっし。じゃあこの金塊を分けよう、シュワルツ。タダで働かされたこいつらに、給料やらねェとな」
「そうだな。これ一つあれば、しばらくは彼らも食べていける」
「いいよな?イリス」
 イリスは何も言わなかった。だが、それは肯定の意味。自分達と、奴隷にされた彼らでは、どれだけ大変な思いをしてきたか分かっている。
「それじゃあ、仕上げといくか」
「仕上げって、何するのよ」
「手ェつけられないようにしとくんだよ。第二第三のラースが出たら困るだろ」
 坊主頭の男が使おうとした爆弾を手に取り、ディークはその導火線に火を点けた。
「いっけええええ!!!」
 ぶん、と穴目掛けて投げる。
『ああああ~~~っ!!!』
 縄で縛られた坊主頭の男と、番兵達の悲惨な叫び。
 だが、それはすぐ、爆音に掻き消された。
 穴は、爆発で砕かれた石によって塞がれていった。
「仕事完了だな☆」

 後日。
「はっ、離せぇぇぇ~~~~~~っt!!!」
「きりきり歩け!!大人しくしろっ!!」
 ラースはディーク達の通報により、逮捕された。
「年貢の納め時って奴だな。お前さんを雇ったのが、奴のミスだったと言うか何と言うか」
 シュワルツは、にやりと笑った。二ヶ月伸びっ放しだったひげを剃った為、凛々しく見える。
「いやあ、照れるな。俺は仕事するつもりで受けただけだったんだけどなぁ」
「――だろうな。じゃ、俺は行くぜ。お互い頑張ろう、ディーク。イリスも、元気でな」
「ああ!お前もな」
 ディークとシュワルツは、堅い握手を交わした。
 熱い熱い、漢の握手の後、シュワルツは手をひらひらと振りながら去っていった。
「・・・それより、ディーク」
「ん?何だよ」
「今回、何の報酬も無いんだけど」
「――あ」
 忘れていた。黄金は全て、奴隷にされていた者達で分けた。ラースからは、報酬を受け取っていない。
「・・・まあ、ラースはタダ働きさせるつもりで雇ったんでしょうけど」
「ちっくしょ~~~~~~~!!!」