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仕事伝説 ―コンビ誕生!!―

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 物凄い勢いで、ディークは駆け出した――のだが、玄関でつまずき、地面に豪快にキスをするのだった。

 次の日。ラース邸に、ディークはイリスと共にやって来た。
 結局、イリスは言った通り、夕方に戻って来た。曰く、もう家への道は覚えてしまったとか。やはり、かつての仕事柄、すぐに地理を覚えてしまうのだろう。
 しかし、気まずい。
 イリスはもう、昨日の事を気にもしていないようだった。それが返って、ディークを緊張させる。何気ない声かけが出来ない。
「ディーク!」
「はいッ!?」
「どうしたのよ。先刻から上の空よ?」
「いや・・・別に~?」
 口笛を吹こうとして、ひゅーひゅーと口で歌う。口笛が吹けないのがばればれである。
「だから言ったでしょ。もうあれは聞かなかった事にしてって。まだ、私の仕事柄のくせが抜け切ってないだけだから。ディークが気に病む必要は、これっぽっちも無いわ」
「ああ・・・うん。なら、良いんだが。ごめんな」
「何で謝るのよ」
「いや、何となく」
 イリスは何か言いたげにしたが、口を閉ざした。屋敷から、ラースが出て来たからだった。
「お早うございます、ディークさん!」
 身体をでぷでぷと重そうに動かしながら、ラースは近付いて来る。今日は昨日と違って、緋色尽くしの恰好である。
「どうも!荷を預かりに来ました」
 ラースはパンパン!と手を叩いた。二人の男が、よろよろと、黒い箱を肩に担いでやってきた。
 ゆっくりと地面に置かれたその箱は、ラースが言っていた通り、確かに左程大きくなかった。
「これです。どうか、よろしくお願いします」
「お任せ下さい!!イリス、行くぞ」
 ディークは二人がかりで運ばれてきた箱を太い紐でくくり、ひょいと背負った。
「ディーク・・・・・・重く、ないの?」
「?こんなの軽いうちだろ?イリスは持たなくて良いから」
「・・・のようね。多分、私一人じゃ無理だし」
 イリスだけではなく、ラースも。荷を運んできた二人の男も、唖然としていた。
「・・・俺、何かやったか?」
「ええ、存分にね。行くわよ、ディーク」
「お、おう。じゃ、行って来ます」
「お気を付けて」
 ラースは我に返り、笑って二人を見送った。

 ディーク達の住む国、ベルク共和国は、荒野の多い国だ。砂漠と何処が違うのかと訊かれれば、辛うじて草木が生えていると答えるしかない。
 水が沸いている場所も限られており、そこに街が点々とある。四日は確かにかかる。前にも、ラースはこれと同じ荷を運ばせた事があったのだろう。
 街を経由し、ディークとイリスはエイルの谷までやってきた。
 エイルの谷は、以前は単なる山だったらしい。そこを、流れていた川が山の表面を削っていった。川が干上がって無くなった後、この谷は出来たという。
 気候の急激な変化により、この地方は荒原となった。その為、この谷には緑がほとんど無い。傍目から見れば、何も得る物のない不毛の地であるが。
「イリス、本当にここに、そーゆー資源があるっていうのか?」
「こういう情報は、信じないんじゃなかったの?」
「いや・・・なんつーか、好奇心はあるというかな、うん」
 あさっての方を向き、またも口で歌って誤魔化すディーク。全く誤魔化しきれてはいない。
「子供みたいな事言ってどーするのよ。上層部の情報は確かだわ」
 谷へと降りていく。次第に、つるはしやハンマーの音が聞こえてくる。
 何かを掘っているようだ。
「・・・イリス、ひょっとして当たりか?」
「みたいね。それと、あそこにいるのが荷の受取人ってやつじゃない?」
 イリスが指差す先。坊主頭の屈強な男が立っている。後ろには、大きな洞窟が見える。そこから音が響いてきているようだ。
 周りを見渡すと、ところどころに槍を構えた番兵がいる。
(なんだ・・・この物々しさは)
 ここは国境ではない。見張りは必要ではない筈。
(ちょっと・・・まずいか?)
 一瞬、嫌な予感が頭をよぎる。
(いやいや、向こうだって事前に聞いているはずだ。むげな事はやらないだろう)
 そうこうするうちに、洞窟の方へと着いてしまった。
「ラースさんから、届けるように言われてきました。荷の確認、お願いします」
 口を一文字にした男は、ゆっくりうなずいた。
 荷を降ろすと、その男が箱を開けた。
 黒い箱の中は、目を奪われるほどの――。
「き・・・むぐ?!」
 叫ぼうとして、イリスに口を封じられる。
 箱の中は、目を奪われるほどの黄金。金!!金金金!!!金塊の山!!!
 無意識に、そちらに吸い込まれそうなほどの誘惑が、黄金から発せられている。
 ディークにはやましい気持ちなど無い。ただ、魔が差しただけだ。
「ディーク、落ち着きなさい!」
 小声で、こちらを叱り付けるイリス。
「きふは、きふはおれほよふれひる(金が、金が俺を呼んでいる)・・・!!」
「馬鹿言わない!仕事で私達は、これを運んできたんでしょ?!」
「はっ!!」
 我に返る。そうだ、自分は仕事で来たのだ。誘惑に駆られては仕事にならない。
「いかんいかん、俺のキャラが崩れるところだった。ありがとな、イリス!」
「キャラって・・・・・・」
 受け取り側の方は確認を済ませたのか、箱の蓋を閉じ、立ち上がった。
「ご苦労だった。戻っていいぞ」
「毎度~っ」
 会釈し、ディークは背を向けた。また黄金の誘惑に負けそうな気がしたからだ。
 ――と。背中がちりちりした。
「イリス!!」
 叫びつつ、ディークは身をひねった。イリスはこちらが警告する前に気付いていたのか、飛んでくるそれの軌道から、既に移動していた。
 そして、それを手で受け止める。手の中にあるのは、槍。
「何しやがる?!」
 坊主頭の男に、ディークは叫んだ。
「どうやら担がれたみたいよ、ディーク」
「何・・・!?」
 坊主頭の男が、にんまりと笑った。
「そう簡単に帰すと思ったか?青二才」
 番兵達が、わらわらと集まってくる。
 口封じの為の、兵士達。
「どーゆー事だよ?!オイ!!」
 瞬く間に、周りを囲まれるディーク達。
「ディーク、私は〝転進〟する事をお薦めするわ」
「て、転進?どう進めって・・・」
「馬鹿ね。逃げるって事よ!!」
 イリスは後ろを向くと、一番近くに居た番兵へ、槍を投げた。
 勢い良く、胴に槍を受けた番兵が倒れた。とばっちりで、後ろに控えていた番兵達がドミノ倒しになっていく。
「行くわよ、ディーク!!」
 イリスの投げるナイフが、更にその囲みを混乱させる。ディークはイリスに引っ張られる形で、その囲みから抜け出した。

 谷が見えなくなるまで、走ろうと思った。後ろを振り返る事無く、必死で走る。
 だが、向こうも追ってくる。
「ディーク、大丈夫!?」
「ああ・・・っ」
 答えるものの、力が無い。一人であの荷を背負っていた疲労が、今頃出たのか、思うように走れなかった。
 イリスはそんなディークを見つめ、後ろからやって来る追手達を見た。
「先に、行って。すぐ追い着くから。ここは私が食い止めるわ」
「駄目だ!!」
 ディークは彼女の腕を掴んだ。
「どうしてよ!このままじゃ二人とも死ぬのよ?!」
「お前、さっき先刻何人殺した!?」
「え・・・?」