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仕事伝説 ―彼と彼女―

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「いいえ。今すぐ重臣方を呼び集め、高々と宣言して頂きます」
「う・・・ッ、貴様、何者じゃ・・・?」
 ヴァインは薄く笑った。それはネフトに恐怖を与える為でもあった。
「只の殺し屋ですが、それが何か?」
 金を貰って働く下衆ではないのだが、これ以上の脅し文句はない。それに、国の崇高な名を口にする訳にはいかない。心の中で呟く。
 そう、全てはブライツ王国の為に。

 リュカスは、箒で掃く手を止めた。
「まだ、フュウの使用人をされているのですか?」
「貴方もでしょ。何かあった?」
 訊ねると、彼は静かにこう告げた。
「リュカス・ウェッジ。本日夜、フュウ邸は消えてなくなります」
 ヴァインのその一言で、総てを悟る事が出来た。
「そう、遂に。でも、『メイス』の人間は私達だけ。どうするつもり?」
「ご心配なく。外にもまだ十五人は居ます。さしもの彼でも、『メイス』の人間数人を、同時には倒せないでしょう」
「彼を倒した後は?」
「炎に紛れて、その日にここを脱出します」
 それだけ言うと、ヴァインは屋敷の門から出て行った。
(遂にこの日が来た。それだけね)
 いつも、この繰り返しだ。特に、任務を遂行したからといって、その事に関して心地良さもない。それが義務となってしまった。只それだけの事。それだけの事なのだ。
 助けてもらったとはいえ、恩を感じてはいない。元々、彼を狙って潜入したのだから。