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グランゼーラそうえん
グランゼーラそうえん
novelistID. 29618
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戦国ファンタジー物(仮)

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「こんな道無き道を進むのに、疲れない人間がいたら驚くな。まぁ、私は別の面が大きいが」
 別の面、詳しくは言わなかったけど、多分しの自身が女である事だろう。やっぱり男女では体力も大きく違う、しののように女であることを隠して男と同じ事をするのは相当な苦労があるのだと思う。
「このまま隠れているのはやっぱりだめかなぁ」
「ダメではないが、城を発見しておきたいところだな。勝ち戦の時はなるべく城の近くにいたい。そうなると戦う戦わないは別にして、進む必要がある」
「そっかぁ・・・」
ボクらのように身元が不明な兵士は、戦の勝敗が決まっている場面では、なるべく戦場・・・偉い人が視認できる場所にいる必要がある。必ずいなくちゃいけないというわけではないが、ケチな人の場合だと報酬が貰えずくたびれ儲けになってしまう。まぁ隠れていて貰うというのも虫のいい話かもしれないが、参加することにボクらの場合意義があるので、貰えるものはなるべく貰えるようにしておきたいのだ。
「で、どうだ? 空気の流れとやらはマシになったか?」
そういえば、ボクが隠れた方が良いと言ったから隠れたんだった。どうだろう? ボクはまた目を瞑って、空気を見てみる。不穏な感じはするが、
「なんか、あたたかい・・・?」
「もっと具体的に言って欲しいのだが」
「あはは・・・」
ボクが笑って少し誤魔化していたら、風を切るような音が鳴った。少しだけ遅れて背中に衝撃が少し伝わる。ひょっとして矢でも降ってきたのだろうか。
「どうやら風上に敵がいるみたいだな。いや、風上に敵がいるのはわかっていたが、けっこう近いところに」
とりあえずまだ、隠れていて良かったということはボクにはわかった。矢筒から矢をとりだして、いつでも戦えるように準備をする。 しのも矢を用意している。
ところでこの矢って前に飛ぶのだろうか・・・
身を屈めて、木の横に出る。この弓矢は手製である。ちゃんと使えるか不安だ。
弓の弦を引き、前に向かって・・・放つ!
ぱちん と微妙な音を鳴らし、弦が切れた。そして放ったはずの矢は、足元近くに横たわっていた。





「・・・。」
「・・・。」
































矢を放ったボクはもちろん、すぐ近くでその様子を見ていたしのも固まっていた。
ボクは矢筒を地面に突き刺した。弓も捨てていくか・・・
「まぁ、弓だけは持っておけ、登るのに役立つし、持っていれば敵も少しは警戒してくれるかもしれないし、怯んでくれるかもしれない」
「・・・そうだね」
「・・・まぁ、手製ならそんなものだろう」
 確かに弓自体は山登りに杖としてそれなりの役に立っている。弓としての用途は果たして無いが、あって無駄ということではなかった。弓とそれははたして呼べるのか微妙だけど。    
そして矢と矢筒は完全な無駄だった。
「いたぞおおぉぉ!!」
刹那、上の方から声が聞こえた。見つかった!?
慌てて、木の影に隠れるが、矢は飛んでこなかった。ふと、視界を回すと、下の方にいた味方に矢が刺さって倒れていた。見つかったのはボクらではなかったようだ。
「適当に放ってみるか」
しのは、山の上の方に向かって弓を構えた。ここで矢を放つのは敵にこっちの場所を教えることになるんじゃ・・・
意外と好戦的なしのを嗜めようと声をかけようとしたが、しのは矢を先に放っていた。
「がっ!?」
「どこだ!?」
「出て来い!!」
山の上の方から声が聞こえる。どうやらボクらはまだ見つかっていないようである。
「大体の敵の居場所はわかった。ちょっとここから離れるぞ」
「う、うん」
しのはどうやら、敵の位置を知るために矢を放ったようである。矢を放ったあとに悲鳴やら怒号やらが聞こえた関係から、しのの矢が命中したと思っていいだろう。攻撃は最大の防御と言うのはこういう場面での使い方で合っているのかはわからないが、こういう矢の使い方をするのは意外だった。
ボクやしのももちろんだが、山の上という有利な位置をとっている敵からしても山間というのは非情に視界が悪い。地図があったとしても、景色が大して変わらないので性格な現在地を知ることは難しいだろう。しのは何回か流れ矢を見ている。それでおおよその敵の位置の見当をつけて、矢を放った。
戦わないに越したことはないが、攻撃はなるべく先制攻撃したほうが有利だ。こっちの位置が知られない前提だけども。そして攻撃した後その場を離れれば、こっちは見つからず敵に余計な緊張感を与えることができる。そのせいでこっちの味方に被害が及ぶ可能性もあるけど、それはボクら(というかしの)が与り知るところではない。 そして致命傷を避けるのも大事だが、ボクらのような下っ端をはじめ、他の敵味方共に気をつけていると思うが、とにかく切り傷に注意している。矢にしろ、他の手段にしろ、かすり傷がそのまま死に繋がる。矢に毒や汚物をかけていることもあるが、どっちにしろ、当たらない事が大事だもし、あたった場合は持っている水を惜しみなく使って洗う必要がある。野草とかの中に薬草があったら儲けだ。人によっては塩や尿や糞を塗ることもあるらしいが、ボクはできればやりたくない。
「ぐ!」
今度もまた、上の方から悲鳴が聞こえた。心なしか味方がどんどん駆け上がっていくような気がする。これはひょっとしてかなり有利に戦いを進めているんじゃ?
「しのっ! 一気に駆け上がっても良さそうだよ!?」
ボクは見つかる危険を顧みず声をあげて、しのに呼びかける。
「そのようだな! いくぞ!」
そう言うと曲線を描くようにゆっくり登っていたボクらは、一直線に山を登り始めた。
急げ いや危ない ゆっくり いや待てない 色々な気持ちがボクの中で葛藤する。それでも何かに突き動かされて、重心を崩しながらも徐々に駆け上がって行く。
「流!危ない!」
「うわっ!?」
何か大きな物体が転がってくる。しのは先に気づいてボクに声をかけてくれるが、ボクは避けられずその物体に押しつぶされる。これは・・・人・・・?って死体!?
「うわあああああああ!!!!」
ボクはまったく死体をみたことがないわけじゃないが、さすがに悲鳴をあげずにはいられなかった。ただ、一緒に麓まで、そしてあの世まで道連れにされてなくて良かった。
「流!大丈夫か!?」
しのがボクを引っ張り上げてくれる。死体はそのまま転がって、途中の木に引っかかっていた。
「なんとか・・・」
よくみれば、周りは死体だらけだった。頭ではこういう風に味方がいっぱい死んでいくものとわかっていたが、実際に目にするのとはやっぱり違う。それでも前へ進むという答えが浮かんでくるあたり、少しずつ慣れているのかもしれない。
「進めそうか?」
しのは心配そうな顔をしてボクに声をかけてくる。
「うん、それより急いだほうがいいね」
「ああ、そうだな」
また山を駆け上がる。今度は何かにぶつからないように、少しだけ注意をしながら。時々水を口に含んだり、塩を食べたりしながら、体力を失わないように気も配る。
「もうすぐ頂上だ!」
ボクでもなくしのでもなく、近くにいた味方の誰かがそう叫んでいた。