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グランゼーラそうえん
グランゼーラそうえん
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戦国ファンタジー物(仮)

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例えばボクの場合は木でできた胸当てと、臑当て。竹で出来た傘、手作りの小さい弓と矢筒、竹で出来た水筒、焼き塩、握り飯、包帯用の布切れ、錆びてボロボロになっている包丁、身長の三分の一の長さの竹槍、戦利品入れ用の大きな袋・・・等を身に纏っている。随分多いように思える(実際ボクもまだ慣れていない)が、実際はこんなもんじゃ全然足りない。水と食糧は大事に食べても三日もつかも怪しい。怪我をした場合や病にかかったりしたら無事では済まないだろうし、そもそもこの防具だって気休め程度にしかならない貧弱な装備だ。ボクはまだ慣れていないし、経験も少ないから動きやすさを重視してのこの装備だが、しのは金属で出来た胸当てを身に纏っているし、弓もかなり大きい。腰には少し短めだが刀と色々な雑事(たとえば木の皮を剥いだり)に使う短刀もある。傭兵に多いのはしののような装備だが、もっと重い槍や弓・刀を扱う人だっている。そして主力の兵士となると、鎧から軍旗、荷物などもさらに重たくなる。敵の弓や投槍、突撃を防ぐための大きな木の板を持っている兵士もいる。もっともボクらのように物資が支給されてない傭兵と違って、しっかりと徴兵された兵士にはある程度物資の支給が保証されているから、ボクらより荷物は少ないのかもしれないけど
「まぁ、そのために職人がいるわけだ」
「職人?」
「そうだな・・・あれだ、あの人のようなのだ」
しのが顎で示した先に鍬を持った、故郷で見慣れた農作業する格好をした人がいる。
「とても職人には見えないけど、身分でも隠しているの?」
「いや、職人って言ってもこんな戦場に林業の人を雇う余裕があるとは思えない。まぁいるかもしれないが、流は戦に来る時何を持ってきた?」
えっと、布とか僅かな食糧とか、あとは怖いから集落の近くで槍とか弓作ったっけ・・・あ!
「普通なら何らかの武器を持ってくるだろう? だが武器は買うのも高価だし、手入れだって必要だ。そんなものを全員が用意できるわけじゃない。そうすると使い慣れた農作業で使う道具を武器として持ってくる人だっているんだ。それさえ持ってこられない人は、流のように適当につくるしかない」
まず、定期的に集められている農民は特に問題が無ければすでに決まった役割が与えられる。だが、その役割が決まっている人も戦を続ければ続けるほどどんどん減っていく。そこで新たに集められた人を見て、役割を与える。
まず、自前でしっかりとした装備を用意してきた者はもってきた武器に合わせて分けていく。但し彼らは身元がしっかりしているある程度家柄の格がある者だ。彼らには一番槍として軍の先鋒となるか、本陣で待機しているかのどちらかになることが多い。
身元がしっかりしていても、背が大きく力のある者は弓か木の板・・・つまり楯(たて)持ちに選ばれる。ここで言う弓というのは、しのの持っている弓よりも大きな弓のことだ。大体人間よりも大きく、平屋よりも高さがあるのもある。
そんな家ほど大きな弓が扱えるということは、戦においてほとんどの事が出来るとみなされる。というか出来なくても出来るように鍛えられる。他の人ができない力を要することを頼まれる。次に弓が扱えそうに無い人に槍を与える。武器が足らなければ、農具や自らが手作りした武器を使う。ここまでが軍の主力に位置する人達だ。
「普段は軍の端っこにいて、目立たないような農具を主に使う人に山の整備をさせるんだね?」
「そういうことだ。使い慣れた道具で山を耕すわけだ」
平地での戦なら使い捨てにもできず、かといって戦力としてあまり期待できない部分の人達に農具で道をつくるということになる。
「だが、これには問題がある。わかるか?」
しのはいつも全部は説明せず、所々ボクに考えさせるようにしている。おかげで随分と色々な事に考えがいくようになった気がする。
「うーん」
ボクは考えてみた。山に軍が通りやすい道を新たに作ることは、敵も考えが及ぶだろう。当然山を耕そうものなら邪魔をしたい。山の上からなら登るよりかは危険が少ないから、少し降りて弓で射ればいい。そうなってくると・・・
「つまりボクらみたいな軍に数えられていない微妙な人たちに露払させるなり、囮になるなりしてもらうってこと・・・かな?」
「上出来だ」
繰り返しになるが、ボクとしのは傭兵である。ただし、職業軍人のような訓練された戦闘集団ではなく、身元や身分がはっきりしない人たちをまとめた存在である。上の人間からすれば、いてもいなくても困らないが、いるのであればうまく利用したい。ただし、主力としてきっちり計算できない。いざ戦う時になって寝返られたら意味が無い。
だが、整備されていない山を先導して戦うのであれば、見つかり次第戦になる。裏切る暇は無いし、たとえ裏切ったとしても、主力が控えていれば撃退できるという二重の構えとなる。
「ってことは、この戦はかなり厳しい物になるんじゃないの?」
逃げにくい、戦いににくい、裏切るのも無謀、報酬だって悪いだろう。
「そうだな、出来る事なら私一人ならこの戦には参加したくない」
ついこの間村から出てきたボクと違い、しのはかなりの数の戦を悪い意味の傭兵として、経験している。生き残る確率の低い割りの合わない戦は切り捨てるはずだ。
「だが、流、お前がいる。私が決めるよりもお前が決めるのが一番生き残る確率が高いだろう」
 ボクらの役割はきっちり決まっている。まず経験の多いしのが、いくつかの仕事を見つけてきて、ボクに話す。それをボクが最終的に判断するということになっている。しのが言うにはボクは勘というか、危機感が敏感らしく、ボクが選んだことなら負けることはあっても死ぬことはないだろうと言うのである。確かに今のところ生きてはいるけれども。さて、どうしたものか。
「これ以外に傭兵の募集はなかったの?」
「・・・あるなら先に知らせる」
「そっかぁ」
少しだけ表情を曇らせたしのが恐い。まぁ、しのが好き好んで難しい戦を選ぶとは思わないが、現実逃避したいボクの気持ちもわかって欲しい。もしかしたらってことがあるかもしれないじゃないか!
「戦に出ないと野垂れ死に決定だよね・・・」
「まぁそうだろうな。私らには、戦で生き延びることは出来ても、腕っ節が際立って強いわけではないからな。かと言って別の事で稼ぐあてがあるわけでもない」
戦にただ出るだけならまだしも死ぬ公算が高い役割だ。ボクはもちろんのこと、しのだって出来ることなら行きたくないだろう。だからといって、何か稼ぐあてがあるわけでもない。
「じゃあ行こうか」
「わかった。危ないと思ったら逃げ出してくれよ。流が逃げ出す時は命の境界線だからな」
「う、うん。あんまりあてにされても困るけどね」
しのは経験も実力もある程度あるが、女であるが故に色々と制限がつきまとう。しのは経験と実力でボクを引っ張り、ボクは男として女であるしのが不自由する場面を手助けする。そういう間柄である。
 ボクとしのは傭兵を募集している場所へと向かった。











第二話 辿るべき道