ノブ ・・第3部
どんな顔して恭子に顛末を報告したらいいんだろう。
頭の中がグチャグチャのまま、ボクは三省堂の前の横断歩道に立った。
仕方ない、ここまできたら正直に話す他ないな・・とボクは半ば開き直って道路を渡り、恭子のマンションに着いた。
部屋のチャイムを押すと、ハーイ・・と声がしてドアが開いた。
「おかえり」
「ただ今・・」
恭子は目でボクを促し、ダイニングに行った。
ノロノロとスニーカーを脱いでボクも続いた。
「のど、渇いとらん?」
「うん、カラカラ」
はい・・と恭子はアイスコーヒーをテーブルに置いて、椅子に座った。
「どうやったと?先輩の具合は」
「うん、大分楽になったみたいで安心したよ」
「そう、良かったっちゃ・・」
恭子はそれだけ言うと俯いた。
きっと聞きたい事は別にあるんだろうが、恭子はそれきり黙ってしまった。
その姿はボクの心にキリキリと自責の念を湧き起こさせた。
「あのさ・・」ボクが口を開くのと同時に、恭子も顔を上げた。
「何て言いよった?あの女は」
「え?」
「アンタ、話してくれたっちゃろ?うちの事」
「あ、うん。ちゃんと話したよ」
分かった・・と恭子は立ち上がって冷蔵庫を開けて、缶ビールを取りだした。
「な、うち、飲んでも良か?」
「え?」
「何か飲みたい気分っちゃ・・」
そう言って恭子はプシュっとプルトップを引いた。
ゴクっと一口飲んで、ボクを見て言った。
「良かよ、もう」
「アンタがちゃんと話してくれたとやったら、もうそれで良かけ」
「良かって・・・恭子」
「あの女は何を言ったか、知りたかけど知りたくなかけん」
「・・いいの?それで」
恭子はもう一口飲んで、今度はニコっと微笑んで言った。
「アンタが戻ってくるまでな、散々考えとったと」
「2人で何を話してくるっちゃろ、アンタに言われてあの女は何て言うとやろ・・とかな」
「でも、もう良か」
「アンタが約束通り戻ってくれたけ、もう良かと」
「きっとな・・・」
「うん」
「アンタ達の細かい話聞いてしもたら、うちも余計な事考えてしまうかもしれんけね」
「余計な・・事?」
「うん、余計な事っちゃ」
「どんな事?」
「やけ、もう良かと。何もかんも」そう言って恭子はビールをボクに渡した。
ボクも一口、飲んだ。
渇いた喉に冷たいビールが転がり落ちて、その気持ち良さにボクは一気にゴクゴクと喉を鳴らして飲み干してしまった。
「あ、ごめん、飲んじゃった」
「大丈夫、まだあるけん」
恭子は笑いながらもうニ本、冷蔵庫から出してテーブルに置いた。
「はい、飲もう?」
「うん、でも・・」
「なん?」
「今日帰るんでしょ?いいの?飲んじゃって」
恭子は今度は大ぶりのグラスにビールを注ぎながら、言った。
「帰らん事にした」
「え?」
「うちに電話してな、勉強の分からん所を東京におる同級生に聞いてから明日帰るっち言うたと」
「それって平気なの?親父さんは」
「ま、勉強っち言うといたけ大丈夫やろ」
そう言って恭子も喉を鳴らせてビールを飲んだ。
「美味しかね、冷えとるっちゃ!」
凄いな、恭子さんは・・とボクはアングリと恭子を見つめて言った。
「すごかろ?女ってな、平気で嘘つけるっちゃ!」
恭子は微笑みながらボクの前にグラスを置いた。
「好きな男と一緒におられるんやったら」
「うち、親にも平気で嘘つけるばい」
そう言って恭子は、座ったままのボクを優しく抱きしめた。
「軽蔑せんでね?こんな女やけど」
「そんな、軽蔑なんて・・」
「アンタともうちょっとおりたかけん」
「恭子・・・」
「うちのこと、好いとる?」
「うん、好き」
「本当に?」
「ほんとうに・・」
「なら、もういいっちゃ」
屈んでしてくれた恭子のキスは、懐かしい味がした。
そして恭子は、ボクの頭を胸に抱いて言った。
「抱いてくれん?」
ボクは答えの代わりに、頷きながら恭子の腰を強く抱いた。
ボクは立ち上がって恭子の手を引いて、ベッドに向かった。
「あ、ちょっと・・・」と恭子は手を離して、ベッドルームの扉とカーテンを閉じた。
濃いブルーのカーテン越しの淡い青の光が、部屋を満たした。
「脱がしちゃるけね」
「有難う」
恭子はボクのTシャツを脱がせて、ジーパンを下ろした。
「あ、湿布して貰ったっちゃんね」
「うん、外来で包交のついでに貼ってくれたんだ」
「そっか、したら・・・」
恭子はボクをベッドに仰向けに寝かせて、自分も裸になって言った。
「アンタは動かんで良かけん・・」
「うちに任しとき」
「恭子」
「・・・・」恭子は黙ってボクのトランクスを脱がせた。
そして恭子は、ボクの開いた足の間に正座して、両手でゆっくりと足をさすって言った。
「困ったオトコっちゃ、本当に」
「・・ごめん」
それだけ言うと恭子は両方の太腿を優しく撫でながら、オチンチンに息を吹きかけた。
「あ、大きくなってきたばい」
「くすぐったいよ」
ふふ・・と笑いながら、恭子は右手を添えてオチンチンを口に含んだ。
久しぶりの恭子のフェラチオは、さゆりさんともリエ坊とも違って・・ゆっくりと、でも唇と舌全体を使ってオチンチンを丁寧になぞる感じだった。
ボクは目を閉じて、この懐かしい快感に身を委ねた。
「気持ちいい」
「・・・」
「恭子」
「・・なん?」
そろそろ入れたいんだけど・・と言ったボクに、恭子はニッコリして言った。
「いかん、飲むっちゃけ」
そう言うと恭子は右手で根元を軽くしごきながら、口の中で舌をグルグルと回しだした。
「恭子、イっちゃうよ、いいの?」
「・・・」
恭子の頭が上下に動きだして、とうとうボクは大波にのまれて一気に射精した。
「あ〜!」
一瞬恭子の動きが止まり、ボクは目を閉じて大きく息を吐いた。
ボクの精子を飲みこんだ恭子は、やっと顔を上げてボクを見た。
その額には汗が浮かんでいた。
「アンタの、飲みたかったと」
「やっぱ、甘い?」
「うん、苦いっちゃけど・・な」
恭子は笑いながら汗を拭い、言った。
「うちの事、好いとう?」
「うん、大好き」
「なら言うて」
「え?」
恭子が一番好きだと言って欲しい・・と恭子はボクの横に来て、抱きついて言った。
「一番だよ、恭子が」
「したらもう、浮気せん?」
「うん、しない。恭子の泣き顔見るの、もうイヤだもん」
正直な気持ちだった。
勿論、リエ坊にもひどい事をしたのは分かってる。でも、バレた揚句に何が一番堪えたか?と言えば、それはやっぱり恭子の泣き顔だった。
「嬉しか」
恭子はボクの頭を抱えてキスしてくれた。
「で、二番は誰ね?」
「はぁ?」
「うふふ、嘘たい。もう良か」
そう言って恭子はボクの乳首を舌で愛撫しながら、右手でオチンチンを撫でた。
「な、もういっぺんしても良か?」
「う、うん・・」
恭子に優しく撫でられて、愚息はまたもや鎌首を持ち上げだした。
「すぐ、硬くなるっちゃんね」
「だって、触られたら仕方無いっしょ」
「・・可愛いっちゃ、コイツ」
カチカチになったオチンチンを、恭子はボクに跨って頬ばった。