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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ ・・第3部

INDEX|64ページ/70ページ|

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「うん、美味しかった、有難う・・」
良かった・・と言いながら恭子はバスタオルを巻いただけの姿で出てきた。

「顔色も良うなってきたばい」
「ビール、飲まん?」
「え、いいのかな・・」
「飲んだら痛くなりそうなん?」
「いや、そうじゃなくてさ、こんな場合オレ、飲んでいいのかなって・・」

「こんな場合って、どんな場合なん?アンタは」
「・・」ボクは黙って下を向いた。
恭子はボクに何を言わせたいんだろう。そしてボクは何て言ったらいいんだろう・・。

「もう、良かよ」
「え?」
「アンタを責めようと思っとったけど、考えてみたらうち、アンタの奥さんでも婚約者でもないんやけね」
「うちがおらん時、どこで何しとってもそれを責めるのはお門違いっちゃ」
「・・恭子」
「アンタの首に鎖は付けられんけね」
恭子はまだ濡れた髪をタオルでゴシゴシしながら言った。
そして、一呼吸置いてボクを見つめて続けた。

「でもな、うちがどんだけ寂しかったか分かっとるん?会いたくて来たのに他の女がおったら・・」
「うん、ごめん」
「悔しかったっちゃ、うちがおらん間にちゃっかり色んなものをアンタの部屋に持ち込んで!」

恭子はそれだけ言うと頭を拭いていたタオルで顔を覆った。
「・・矛盾してるのは分かってるっちゃ、自分でも」
「婚約者でもなんでもないんやけ、アンタを束縛する資格なんて無いっちゅう事は分かっとると」
「でも、うちの事を好きって言っとったアンタが他の女と・・」
はらわたが煮えくりかえる気持ちやった・・と恭子は続けた、涙声で。

「でも、やっぱり好きやけん!」
恭子はボクの目を見てはっきりと言った。そして、思い切り抱きついてきた。
アンタの事、嫌いになれんもん・・と言いながら。

「恭子・・」ボクは思い切り抱きしめられた痛みで呼吸が出来なかった。
「恭子、ちょ、ちょっといいか?」
「なんね」
「あの、痛いんだよ、胸が・・」
あ、ごめん・・と言いながら恭子は離れた。

「そげん痛むと?」
「うん、死ぬかと思った、呼吸出来なくて」
「もう、根性無し!」
「だって、ひび入ってるかもしれないって・・」

恭子は今度は何も言わず、両手でボクの顔を抱えてキスしてきた。
「しょんなかばい、これで我慢してあげるっちゃ」
それは、懐かしくて優しいキスだった。

「アンタもシャワー浴びてき?汗臭いっちゃ!」
「あ、ごめん」
「でも着替えが・・」
「良かけ、今夜は裸でおり?罰っち思うてな」

はい・・と言ってボクは裸になった。
「あ〜あ、痣だらけっちゃ、アンタ」
「そんなに?」
「うん、いろんな所が赤くなっとるけね」
「痛いわけやね、ざま見ろっちゃ!」

恭子は笑いながらボクの手を引いた。
「自分じゃ体も頭も洗えんやろ?うちが洗っちゃるばい、汗も他の女の匂いも」
「恭子」
「あ〜あ、惚れてしもた弱みやね・・」
恭子はそう言いながらボクの左目の眼帯を外し、ガーゼだけにした。

「シャワー終わったら消毒しちゃるけん」
「持ってるの?消毒の薬とか」
「これでも開業医の娘やけね、ひと通りは揃えてあるばい」
そう言って威勢良くボクの頭からシャワーをかけてくれた。

嬉しいのか情けないのか、ボクは恭子に分からない様に少しだけ泣いた。

「ちょっと待っとき」
恭子はそう言ってシャワーを止めて、自分が巻いていたバスタオルを外して風呂場の外に投げた。
「濡れるけね」
裸になった恭子は、スポンジに石鹸を付けてボクの背中を流してくれた。

「何人やったと?」
「え?」
「相手たい、何人にやられたとね」
「うん、四人かな」
「袋叩きっちゅう感じ?」
「うん、その通り・・」
はぁ・・とため息をつきながら恭子は続けた。
「アンタ、喧嘩は弱そうやけね」
「だってさ、頭来ちゃったから」
はい、こっち向いて!と恭子はボクの体を捻った。

「あ〜あ、こりゃ本当にヒビ入っとるね」と脇腹の色が変わってる部分を撫でた。
「いて!」
「しょんなかろ?やられてしもたんやけ」
「そりゃそうだけどさ・・」
泡だらけのスポンジで恭子はボクの胸、お腹、しゃがみ込んで足まで洗ってくれた。
最後にオチンチンも洗ってくれたが、いつもとは違って、クタ・・っとしたままだった。
「は〜、コイツも元気無かばい」しゃがみ込んだ恭子が上目遣いに言った。
「うん、ごめん」
さ、終わりやけ・・と言って恭子がシャワーで石鹸を流した。

「頭洗うけん、椅子に座り?!」
「うん」
ボクは大人しく椅子に座って頭を垂れた。
恭子はボクの頭にシャンプーを垂らして、ゴシゴシ洗ってくれた。
そして流した後、リンスも。

「有難う、サッパリしたよ」
「疲れたばい、二人分体洗って洗髪したんやけね」
「すまん・・」
「良か、うちが好きでしたっちゃけ」
「でも久しぶりっちゃ、アンタの体洗うの」
「うん、そうだね。有難う」
「・・良か」

恭子はバスタオルで左目の上だけは注意深く、他は大雑把に拭いた。

「はい、パンツとシャツはこれ」
「え?オレの?」
「当たり前っちゃ!他に男モノなんて持っとらんけね!」
「あ、あの時の・・」
そう、江の島から帰ってきて洗濯機の放りこんで洗っといてくれたボクの一式。

「良かったばいね、着替えがあって」
「はい、すんません」
ボクはトランクスを穿いて、Tシャツをやっとの思いで着た。
「腕、上げると痛いね」
「暫くは不自由な思いするっちゃろね、きっと」

「さ、ここ座り?」と恭子に促されてボクはキッチンの椅子に腰かけた。
恭子はベッドルームから大き目の救急箱を持って来て、左瞼の傷を手早く消毒してくれた。
そして新しい綺麗なガーゼをして眼帯を緩めにかけた。
「不便やろうな」
「うん、距離感が分からないんだよ」
「でも一時はこれで大人しくするしかないな、アンタも」

恭子はそんなボクを笑いながら見ていた。
「やっぱ、ざまあ見ろって事?」
「ううん、そんな事思っとらんよ?なして?」
「だって笑ってるじゃん」
「目の前におるアンタが本物やけ、嬉しいと」そう言って今度は、そっと抱きついてきた。
「これなら痛くなかろ?」
「うん、ギュっとしなければね」
ボクは丁度顎の下にある恭子の頭に、キスをした。

「さ、サッパリしたところで、今夜は休むっちゃ」
「恭子・・いいの?飲まないで」
「うん、うちも疲れたばい」
今夜はこのまま大人しく寝るけんと言って、ベッドルームに行った。
「オレ、一服してからでいい?」
「良かよ」
ボクはセーラムに火を点けて、深くメンソールを吸った。
ハッカの香りが、爽やかで気持ち良かった。

ボクが煙草を消してベッドルームに行くと「電気、消してな?!」と恭子はタオルケットに潜ったまま言った。
壁のスイッチを押すと、部屋は真っ暗になった。
ボクは暗い中、大きなベッドの端からソロソロと上がった。
そして、恭子とは距離を置いて反対側を向いた。

「ね、聞いても良か?」
「なに?」
「うちとさっきの子・・先輩な」
「うん」
「・・やっぱ良か!」恭子が寝返ったのが分かった。

「恭子?」
「なん?」くぐもった声だった。
「怒ってないの?」
作品名:ノブ ・・第3部 作家名:長浜くろべゐ