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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ ・・第3部

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呪われた夜のエンディングは本来、ギターソロの後なのだが・・リエ坊の目配せで、その前にボクらは演奏を終えた。

「ふ〜、良かったね、シン・・」
「うん、気持ち良かった」
「リエさんもカッコ良かったし!」

エヘヘ・・とリエ坊は照れ笑いしながらベースをスタンドに置いた。
こんな顔、ボクらの関係がこうなる前には見た事無かったな。

「これで・・」
6曲、なんとか目鼻が付いたね・・とリエ坊が微笑んだ。。

「うん、何か嬉しくなってきたな、オレ」
「大丈夫よ、この調子で詰めていけばシンなら絶対に!」
「有難う!」ボクもリエ坊も、上機嫌だった。

ね、シン・・リエ坊は少し改まった調子で、言った。
「今夜も・・」
「え?」

「シンのとこ、行っちゃダメかな」
「うん・・」

実はボクも考えていた、もしかしたらリエ坊は・・・。
「でもさお母さん、心配しないかな」
「・・・・」

「リエさん、いいの?2日連続なんて」
「私、行きたい!」
リエ坊は、真直ぐにボクを見た。

「シンさえ迷惑じゃなければ・・だけど」
「うん」ボクは即答出来なかった。

昨日に続き今夜も・・となると、きっとまた・・・。
「リエさん・・」
「何?」

「いいや、ゴメン」
何でもないとボクは言葉を濁した。

「お母さんは、オッケーすると思う?」
「さっきね、実はもう言っちゃったの」
「え?!」

リエ坊はモジモジしながら、小声で言った。
「明日は部室で練習だから、シンのアパートに泊った方が近いからって」
「で、何て?」
「うん、オガワさんのご迷惑にならないのならって・・」

俯き加減でそう言ったリエ坊は、昨日の夜の帰り道の顔だった。

正直、ボクは迷っていた。
このまま今夜も一緒に過ごして、リエ坊との付き合いがエスカレートしてしまったらどうなっちゃうんだろう。
心のどこかでボクはまた、あの小石が転がる痛みを感じていた。

「・・シン、困ってる?」
「ううん、困ってはいないさ。でも・・」

その時、重い扉がガチャっと開いて、マサルが顔を覗かせた。
「ほら、お二人さん?!飯だってよ!」

「え、もうそんな時間なの?」
「何言ってんだよ、もう7時過ぎてんだぜ?」

「母さんが呼んでるからさ、早く来てよ」
オレも飯食いたいしさ・・と言い残してマサルは扉を閉めた。

「いいの?晩御飯まで頂いちゃって・・」
「うん、一緒に食べよう?」
リエ坊はいきなり抱きついてきて、耳元で囁いた。

「そしてご飯食べたら、シンのアパート行こう?」
「リエさん・・」
リエ坊はボクの答えを待たずにキスして、ボクの手を引いて扉を開けた。

小屋の外は丁度黄昏時で、遠くで蜩の声が聞こえた気が、した。


ダイニングルームではもう夕食の準備が済んでいて、マサルは独り食べ始めていた。

「あ、先に喰ってるから・・」モグモグしながらマサルが言った。

夕食はカレーだった。
ダイニングに入った時からしていたいい匂いに、ボクのお腹がグ〜っと鳴った。

「今夜は久しぶりに大勢だから、チキンのカレーにしたの、頂きましょ?!」
「さ、オガワさん・・どうぞ?」
「はい」

ボクはお母さんに促されるまま、リエ坊の隣に座った。
テーブルの真ん中には、大きな白い貝の中にサラダが盛ってあり、銘々の取り皿も貝だった。

「はい」
「あ、有難う」リエ坊がサラダを取り分けて、ボクの前に置いてくれた。

「このお皿の貝、何ていうの?」
「これはね・・シャコ貝」
ボクは初めて見る本物の貝のお皿に感嘆した。なんかリッチだぞ。

サラダはポテトのサラダで細かく刻んだ野菜とリンゴ、ハムが入っていて、パセリが色どりを添えていた。
「カレーは、お好き?」
「はい、大好きです!」

「良かったわ、沢山召し上がってね?!」
「はい」
お母さんがボクの前にカレーを置いてくれた。

見れば明らかに大盛りだった。
チキンのチューリップというのか、骨付きの鳥も3本入っていた。

「シンなら、この位平気でしょ?」リエ坊が笑いながら言った。
「うん、でも・・大盛りだね」

「大丈夫だよ、オレ・・2杯目、これ」マサルは文字通り、モリモリ食べていた。

「いただきます」
ひと口食べてボクは、静かになってしまった。それ程に辛かったのだ、お母さんのカレーは!

「・・・・」

「シン、どう?美味しい?」
「う、うん、美味しい・・」

ボクは口の中のヒリヒリに耐えながら、何とかカレーを食べた。
そして暫くして、一気に汗が頭と云わず額と云わず・・・まるで滝の様に流れ出て来て、ボクは自分の顔が火照るのも自覚した。
舌と喉の感覚は、もう麻痺していた。

「あ、シン・・辛いのダメだったっけ?」
「ううん、平気・・美味しいよ!」

「あ、シンさん、すんげ〜汗!」大丈夫?と、マサルが目は笑いながら言葉だけで心配してくれた。

「だ、大丈夫、ちょっと辛いけど・・」
「姉ちゃん、お絞りくらい持って来てやれよ、シンさん汗だくじゃん!」

そうね、と立ち上がったリエ坊も笑いを噛み殺した様な顔だったから、ここではどうやら、この辛さに参ってるのはボクだけらしい・・。

「あら、オガワさんには少し辛かったかしら?」
お母さんがエプロンで手を拭きながら、キッチンから出てきた。
「ちょっと張りきって辛くし過ぎちゃったかしらね・・」
「ううん、いつもの味だよ、これ」
マサルは平気な顔で2杯目を平らげて、サラダを突きながら言った。

「・・そうね、取りたてて今日のは辛いって程じゃないわね」
お絞りを渡してくれたリエ坊もまた、涼しい顔で食べ始めた。

「う、うん、大丈夫・・オレ、ほら汗っかきだから」
「ウソ仰い、辛いんでしょ?シン・・」
無理だったらいいからね?残しても・・と、今度は心配そうにボクを覗きこみながらリエ坊が言ってくれた。

「あ、そうだ!アレ作ってくる。待ってて?シン・・」
リエ坊はまた立ち上がって、キッチンに消えた。

ボクの前ではお母さんが、小振りなお皿でカレーを食べた。
「そうね、いつもの通りのお味だけど・・・」

「いや、大丈夫です・・美味しいです!」ボクは無理やりニッコリして、カレーを頬張った。
「いいのよ?オガワさん、無理なさらないで?」
「・・平気です、段々慣れてきましたから」

本当だった。徐々にではあるがボクはこのカレーに慣れ始めていた。
でも、汗は変わらずにダクダク流れていたし、口中の感覚は既に無かった・・。

「・・はい、シン」これ、飲みながら食べればいいわ・・とリエ坊がボクの前にグラスに入った白いジュースみたいなものを置いた。

「なに?これ」
「ラッシー」
「ラッシーって、あの犬の?」

「は?なに言ってるのよ、それはテレビでしょ?!」
「ヨーグルトの飲み物よ、インドのね」リエ坊は笑いながら言った。

「ラッシー・・」
「うん、ヨーグルトと蜂蜜を混ぜてあるの、美味しいよ?」

ゴクっと一口飲んで、ボクはまた驚いた。
美味しかった、甘くて冷たくて・・ヒリヒリした口の中が癒される感じで。
「美味しいね、コレ・・ラッシーって言うんだ」
「うん、口の辛いのも和らぐでしょ?!」

「・・うん、ヒリヒリが軽くなったみたい」
作品名:ノブ ・・第3部 作家名:長浜くろべゐ