ノブ ・・第3部
リエ坊はその間、ズっと黙ったままで玄関に立っていた。いや・・・正確には、目を閉じてドアに凭れていたのだが・・。
「リエさん、どうぞ?散らかってるけど」
「・・う、うん、お邪魔します」
リエ坊は消え入る様な声で、スニーカーを脱いで部屋に上がった。
座ってて?今、冷たいの淹れるから・・とボクがパイプ椅子を勧めて、リエ坊は大人しく座った。
サーバーに冷蔵庫の氷を満たし、お湯を沸かして・・と、ボクがアイスコーヒーの用意をしている間、リエ坊は無言のままだった。
「どうしたの?リエさん」
「う、うん・・」
「気分悪くなっちゃった?ひょっとして・・」
「ううん、違うの・・私、独り暮らしの男の人の部屋って初めてだから・・」
両足をキチンと揃えて、小さくなってるリエ坊が可笑しくて、ボクは笑ってしまった。
「何言ってんの、入ったが最後喰われちゃう悪魔の館じゃないんだからさ!」
「まぁね、そうなんだけどね・・」良かった、リエ坊はやっとボクを見て微笑んでくれた。
「はい、もうお酒はいいでしょ?」ボクはアイスコーヒーのグラスをテーブルに置いた。
「有難う・・シン」
リエ坊は一口飲んで「苦い・・」としかめっ面をした。
「あれ、コーヒーは、苦手?」
「ううん、お砂糖とミルク・・いつも入れるから」
あらら・・困ったぞ?ガムシロもミルクも無いじゃん。
「シン、いつもブラックなの?」
「うん、オレはね」
「その方が、香りが分かるからさ・・」
じゃ、私もこれでいい・・とリエ坊は神妙な顔でまた、一口飲んだ。
「うん、苦いけど・・・ほんと、香りが分かるね、コーヒーの・・」
「平気?イヤだったら自販機で何か買って来るけど?」
「平気、これ・・頂く」
グラスを抱えて微笑むリエ坊は、可愛かった。
そこには、いつもの髪を束ねて真剣な面持ちでベースを鳴らすカッコいいリエ坊ではなく、1人の・・可愛らしい女性がいた。
そんなリエ坊を見てドキドキしてる自分に気付いて・・ボクはちょっと慌てた。
「・・シン、ここで練習してたの?」
リエ坊がそのままになってたテーブルの隅を見て、言った。
「うん、そのテーブルの上の雑誌が、ハイハット・・目の前の椅子に積み上げてあるのが、スネアの積もりでね」
「そうなんだ・・・丁度いいじゃん、高さも」
「だってさ、自分の太腿叩いてたら、内出血しちゃってね・・痛くなっちゃったから」
「頑張り屋さんなんだね、シンは」
「だって、迷惑かけたくないじゃん?リエさんとタカダさんに」
やる!って決めた以上はさ・・とボクも一口、飲んだ。
「あ、ほんと!苦いや・・」
「ごめん、豆入れ過ぎちゃったかも!」
「・・大丈夫、段々美味しくなってきたから」実際コーヒーは、濃い目だった。
こんなに濃いコーヒー、本当は平気じゃないはずなのに平気・・と言って飲んでくれるリエ坊が可愛くて・・ボクはグラスを置いてキスした。
キスの後・・
「ごめんね、苦いの飲ませちゃって」
「ううん、平気だってば。美味しいよ?シンが淹れてくれたアイスコーヒー」
私も、これからコーヒーはブラックにするね?!と言いながら、今度はリエ坊がキスしてくれた。
ボクは思わず、キスしながらリエ坊の胸を弄った。
リエ坊はグラスをテーブルに置いて、ボクの背中に両手をまわした。
そして、ボクをきつく抱きしめた。
「・・んん〜」リエ坊の吐息が大きくなって、ボクは更に大胆になった。
「リエさん・・いい?」
「なに?」
ボクはリエ坊のTシャツの下から手を入れ、背中のブラのホックを外した。
「シン・・」
「黙って・・」
ボクは締め付けを解かれて自由になったリエ坊のオッパイを、右手で優しく撫でた。
大きくはないが弾力があって、ツンと形の整った綺麗なオッパイだった。
そしてリエ坊がタカダに言った通り・・決して小さくはなかった。
「・・シン、恥ずかしいよ」
「レッスン・ツーだよ、リエさん」
「分かった」
リエ坊はボクの首にしがみついて、大人しくなった。
ボクはリエ坊のTシャツをたくし上げて、左右のオッパイを交互に触った。
乳首の周りは、特に優しく・・掌で円を描く様に。
「・・シン、何か変な感じだよ?」
「気持ちいいの?悪いの?」
「うん、変だけど、気持ちいい・・かも」
「良かった」
ボクは床に膝立ちして、右の乳首を唇で挟んだ。
「いや!シン、私・・・汗かいちゃったから」
「平気・・」
Tシャツを戻そうとしたリ坊の手をボクは遮って、乳首を舐め続けた。
右から左・・・リエ坊の、汗の味がした。もう乳首は両方とも、ピンと起き上っていた。
「あ〜・・シン〜!」
「何?」
「いい気持ちなの・・いいの?これで・・」
「うん、それが感じるって事なんだよ、リエさん」
「・・いい気持ち」リエ坊は天井を向いて、目を閉じた。
ボクは暫く・・・オッパイへの愛撫に集中した。
リエ坊は全てが初めてなんだから・・・優しく、ゆっくりと。
「ね、シン・・」
「ん?なに?」
「ここ・・お風呂って、あるの?」
「あるよ、風呂位は・・」
「入ってもいい?」
「そうだよね、汗流したいもんね」
ボクはそんな事を聞くリエ坊が可笑しくて、また笑ってしまった。
「また笑う〜!そんなに変?私・・」
「いいや、そうじゃなくてさ・・幾らオンボロでも風呂位はあるのにな〜って思ってね?!」
「ごめん、そんな意味で言ったんじゃないよ?汗かいちゃったから、いっぱい・・」
うん、先にシャワー浴びておいで?!・・とボクはリエ坊の手を引いて、お風呂場に案内した。
「タオルは・・コレとこれ」
「お湯と水は、分かるかな?」
うん、大丈夫そう・・・リエ坊が風呂場の扉を開けて、中を覗きこんで言った。
「じゃ、お先に頂きます・・」
「どうぞ」
ボクは脱衣所の手前のカーテンを引いた。
「あ、シャンプーと石鹸、適当に使ってね?!」
「うん・・」
そうか・・・この風呂を使ったのは、これで三人目なんだな・・とボクは考えながら、セブンスターに火を点けた。
「昨日さゆりさんが綺麗にしてくれたんだよな、お風呂」
ひょんな切っ掛けでリエ坊とこんなコトになってしまったが、ボク自身・・本当はどうしたら良かったんだろう・・と思ってたら、リエ坊がボクを呼んだ。
「ね〜、シン〜?!」
「はいはい・・なに?」
「着替え、どうしよう・・」
「あ、そうか!オレのでいい?新品じゃないけど、洗ってあるヤツで良ければ」
「うん、お願い、貸して?!」
ほいほい・・ボクは短パンとTシャツを出して「洗濯機の上に置いたからね〜?!」と中のリエ坊に言った。
「有難う、借りるね」
そうだよな、着替えなんて持ってる訳ないもんな・・とボクは煙草を消して椅子に座った。
「・・ふ〜、サッパリした!」リエ坊が長い髪をタオルで巻きながら、カーテンを開けて出て来た。
ボクの短パンとTシャツが、妙に似合ってて、ボーイッシュな印象になっていた。
「シンってさ、意外に綺麗好きなんだね・・」
「え、何で?」
「お風呂場、ピカピカでビックリしちゃった!」
何気なく言ったであろうリエ坊の一言に、ボクは苦笑いしか出来なかった。