ノブ ・・第3部
「これが私の、ファーストキスよ、シン・・・」
「リエさん・・」
「だって、知りたかったんでしょ?」
「そりゃ、でも・・・まさか」
「羨ましくなっちゃった、シンの経験聞いてたらさ」
「私、シンが言ってた通り、可哀想だったのかな」
「・・・・」
「シン、怒ったの?」
「え?怒ってなんかないですけど」
「・・けど?」
「ビックリしてます」
「ごめん、イヤだった?」
「いいえ、嫌だなんて・・・そんなんじゃないです」
「じゃ、イヤじゃなかった?私のキス」
「リエさん・・」
ボクはリエ坊の肩に手をかけて、正面からリエ坊を見つめた。
「キスって、好きな人にするもんですよ?」
「・・・」
「だって、羨ましかったんだもん、シンの話聞いてたらさ」
「なんで私には、そんな可愛い思い出が無いんだろう・・なんて思って」
「シンが憎らしくなっちゃった」
そう言いながらまた、リエ坊はボクを抱きしめた。
「不思議なの」
「え?」
「ちっとも、イヤじゃないの、こうしてても」
「リエさん・・」
「シンって、不思議な子だね?」
「こうしててさ、何か・・嬉しいっていうか、シンが言ってたホンワカ?」
そんな感じよ、今、私・・・リエ坊は一層強くボクを抱きしめた。
「酔ってるんですよ、リエさん」
「うん、そうかも・・でも、気持ちいいのは本当よ?シン」
こうしてギュっと抱きしめるって、いいもんだね・・リエ坊は呟いた。
「ね、シンも抱いて?ギュ〜って」
「・・いいんですか?」
「お願い・・」
ボクは言われた通りに、リエ坊を抱きしめた。
見た目よりは、随分と細い・・しなやかな体だった。
「シン?」抱きしめられながら、リエ坊は囁いた。
「シンは、気持ちいい?」
「はい・・」
「ほんとに?」
「・・嘘じゃないです」本当にウソじゃなかった。
ボクはリエ坊を抱きしめながら、その吐息でオチンチンまで堅くなってしまったのだから・・。
「いいもんなんだね、抱きしめて、抱きしめられるのって」
「リエさん・・」
「お願い、もう少しだけ、このまま・・」
「シン、言ってたでしょ?」
「はい?」
「好きでない人とは、手を繋ぎたいとも思わないって」
「はい、言いましたね」
「じゃ、私・・シンの事、好きなのかな」
「リエさん、それは・・」
「そうじゃないって言いたいんでしょ?シンは」
「はぁ・・」
「でもさ、こうしてていい気持ちになるのって少なくとも嫌いじゃないって事だよね?!」
「はい、それは、そうっすけど」
「じゃ、いいや!・・・それでいい」
「リエさん・・」
「って事はさ、シンも私の事、嫌いじゃないって事だよね?!」
「はい、そりゃ・・嫌いな訳ないじゃないですか」
「シン、ありがと・・嬉しい」
リエ坊は、ボクの耳元にキスをした。
次に首筋、そしてまた、唇・。
「リエさん!」
「こうするんでしょ?恋人同士って」
「・・・・」
「シン?」
「なんですか?」
リエ坊はボクの顔を覗きこんで、言った。
「キスって、今のでいいの?唇を合わせるだけなの?」
「いや、それは・・」
「映画とかだとさ、モゴモゴ動いてるじゃない?頬っぺたとかが・・」
「はい」
「あれって、どうするの?」
「あれは、本当の恋人同士のキスですから・・」
「だから、何でモゴモゴしてるの?」
「・・ですよ」
「え、なに?聞こえないよ、シン!」
もう、困ったな、リエ坊は・・・そんなコト説明しなきゃいけないのか?ボクが・・。
フ〜っと1つ深呼吸をして、ボクは言った。
「あれはですね、舌を絡めてるんですよ、2人の・・」
「舌って、ベロ?」
そう言いながら、ベーっと舌を出したリエ坊が可愛くて、ボクは笑った。
そして言った。
「そうです、そのベロを・・お互いに絡ませたりするんです!」
「うそ、気持ち悪くないの?そんなの・・・」
「好き同士には、嬉しいもんなんですよ、そんなキスも」
「してみて・・」リエ坊は真面目な顔で言った。
「え?」
「そのキス、してみて?シン」
「本当の恋人同士の、キスですよ?」
「うん、してみたい・・して?シン」
え〜い、もうどうにでもなれ・・ボクは、リエ坊の顔を抱えてキスをした。
リエ坊の前歯を舌でこじ開けて、ボクは舌を入れ、そしてリエ坊の舌を・・・撫でた。
「んん〜」
リエ坊の息遣いが少し荒くなって・・リエ坊の舌が、おずおずと動き出した。
ボクは少しだけ大胆になって、リエ坊の舌を優しく吸った。
そして、暫く味わった後、口を離してリエ坊を抱きしめた。
「ふ〜・・」
「どうでした?恋人同士のキスは」
「何かすごいね、しびれちゃった・・」
「体の底から、ジ〜ンって・・頭も・・」
「良かったですか?」
「うん、良かった」
「気持ち悪く無かった?」
「うん、全然・・もっとしたい位!」
そう言って、今度はリエ坊がキスしてきた。
少し強引に、でも不安げに舌を差し込んで・・・。
リエ坊の舌とボクの舌が絡み合い、いつの間にかボクらはお互いを貪る様なキスをしていた。
ボクはリエ坊を固く抱きしめて、リエ坊もボクをしっかりと抱いた。
どの位、キスしていたんだろう・・・唇を離して、お互いの頬を合わせた時、2人とも汗をかいていた。
「リエさん」
「シン、ゴメン、ちょっと黙ってて・・」
ボクはそう言われて、黙ったまま、リエ坊を抱きしめた。
リエ坊の早鐘の様な鼓動が、ハッキリとボクにも伝わってきた。
「シン?」
「はい」
リエ坊とボクは抱き合ったまま、ジっとしていた。
お互いの体が汗ばんでいる事は分かったが・・・それでも、そのまま・・。
リエ坊の鼓動とボクの鼓動とが、シンクロしたみたいに共鳴していた。
リエ坊がまた、耳元で囁いた。
「これって、恋人同士のキスってさ・・」
「うん」
「スイッチなんだね」
スイッチ?面白い表現だな・・と思ったが、実際そういった面もあるんだろう。
ボクは、ジーパンの下で膨らみきったオチンチンを考えた。
「リエさん、スイッチが入ってどうなりました?」
「分かんないけど、多分・・・敏感になってる、体中・・」
「敏感?」
「うん、敏感。感じやすく・・っていうのかな、シンの心臓の音、響き・・呼吸、体温まで全部感じる」
「同じですね、オレも思ってた」
「リエさんの鼓動とオレの心臓、一致したみたい・・って」
「苦しくない?」
「うん」
「暑い?」
「平気、リエさんは?」
「私、少し暑い、汗かいちゃった」
じゃ・・ボクは腕をといて離れようとした。
しかし、リエ坊はボクを抱きしめて言った。
「ダメ、暑いんだけど・・・離れちゃダメ」
「リエさん」
「でも、少し緩めてくれる?腕」
「・・はい」
ボクの両手はリエ坊の脇から背中へ、リエ坊の腕は・・だらんとボクの首にゆるく巻き付いた。
リエ坊の胸とボクの胸の間に隙間が出来た。
「ふ〜・・」
「涼しい、ね」
「うん、涼しい」
改めて顔を見合わせて、ボクらは笑った。
ふとリエ坊の瞳に公園の街灯が煌めいて、ボクは見とれてしまった。
「リエさんの目、キラキラしてる」
「ほんと?」
「うん、綺麗」