ノブ ・・第3部
「あ、これか・・これはね・・」
ボクは、昨日夢中になって自分の太腿を叩いて練習したからなんだ・・と太腿を出して説明した。
「可哀そうに・・」さゆりさんは、跪いて太腿を優しく撫でてくれた。
「痛みます?」
「ううん、痛みは随分引いたよ」
「ただ、色は凄いけどね?!」とボクは笑った。
さゆりさんは、ボクの言葉に微笑んで言った。
「良かった・・・」
「ノブさん、さっき私・・・」
「学園祭を見に行きたいなんて言ってしまって、ごめんなさいね?!」
さゆりさんは太腿を優しく撫でながら、消え入る様な小さな声で言った。
「オレこそ・・」
「ううん、いいんです。私は・・」
「ドラムを一生懸命に叩いてるノブさんを、単純に見たいなって思っただけなんです」
「でも悩ませちゃったみたい・・ごめんなさい」
ボクはそんなさゆりさんの言葉に、うまく答えられずに黙ってしまった。
「ノブさん、聞いてもいいですか?」
「ん?なに?」
「私、今夜会えて嬉しかった・・・」
「ノブさんは?」
「オレもさゆりに会いたくて一生懸命来たよ」
「そりゃ特訓でヘトヘトで、ロビーで寝ちゃったけど」
会いたかったのは、本当だよ・・・と、ボクはさゆりさんの手を引いて起こした。
さゆりさんは、ボクを見つめて「本当?無理してませんか?」と言った。
「無理なんかしてない、会いたかったもん、さゆりに」
ボクはさゆりさんにキスをした。
「ごめんね、オレって・・・考えてる事が顔に出ちゃうのかな」
「嫌な思いさせちゃったんなら、謝る」
「そんな事ないです・・」
「でも、分かっちゃいました。ノブさん、彼女さんの事想ってるんだな〜って」
「羨ましかったのかもしれません、私・・」
見たことないですけど、ノブさんの傍にいられる彼女さんが・・とさゆりさんは、ボクの肩に顔を押し付けた。
「ごめんなさい、こんな事言う積もりじゃなかったのに・・」
いいよ・・ボクはまた、キスをして言った。
「今夜はオレ、泊まってもいいのかな?」
「勿論です、一緒にいたい、いて下さい・・」
ボクの肩を、さゆりさんの涙が濡らしたのが分かった。
「うん・・」と言ってボクは、さゆりさんを強く抱きしめた。
「さ、ノブさん・・休みましょうか」
「うん」
さゆりさんに促されて、ボクはベッドに横になった。
「酔っちゃったみたい・・」
本当だった。
横になって目を閉じると体がフワフワと揺れるような感じで、目の奥がチカチカしていた。
「ご気分、悪いですか?」
「ううん、いい気持ちだよ」
良かった・・と、さゆりさんはボクの左隣に横座りになって、腕を撫でてくれた。
「子守唄、歌いましょうか?」
「大丈夫、今夜は・・」
ね、さゆり・・ボクは目を閉じたまま、聞いた。
「なんで、オレなんかを好きになったの?」
「オレ・・さゆりに酷い事してるんじゃない?」
「それは・・・」
「人を好きになるのに、はっきりした理由なんてありません」
さゆりさんは、優しい愛撫をしながら話した。
「ノブさんには彼女さんがいるって知りながら好きになったのは私ですから」
「それに・・・」
さゆりさんは続けた。
「ノブさんは・・お忙しいのに、こうして来てくれて・・」
「私と一緒の時間を持ってくれた・・それだけで十分なんです」
「あと1つは・・今まで知らなかった世界を教えてくれました」
「だからいいんです、これで・・」
私さえ余計な事を考えなければ・・とさゆりさんは、今度は太腿を撫でだした。
「前に言われたじゃん?さゆりに」
「男って、どうしようもない生き物なんだ・・ってさ」
「言いましたね、私」
「ずいぶん、生意気なコトを」
クス・・とさゆりさんが笑った。
「だから、そんな男を好きになった私も、どうしようもない女なんです」
「そう思えば、ノブさんも気が楽になるでしょ?!」
ボクは目を開けて起き上がった。
「いいの?さゆりはそれで」
「はい、いいんです」
「ノブさんが好き、これは本当の事ですから・・恵ちゃんも彼女さんも関係ない、私の気持ちなんです」
さゆりさんはボクを見て、ニッコリと笑った。
さゆりさんの頬に涙が転がった。
ボクは何も言えずに、さゆりさんを抱きしめた。
「さゆり・・」やっとの思いで、ボクは言った。
「オレもさゆりが好きだ」
「彼女を裏切ってる後ろめたさも、勿論あるんだけど・・」
「会いたくて抱きたくて、来ちゃった」
そう言って貰えたら、さゆりは十分なんです・・・と言って、さゆりさんはキスしてきた。
はじめは軽く、次第にお互いを貪るようなキスに、オチンチンがまた反応してしまった。
「ほんと、どうしようもないね」
「はい、でも・・好きです」
さゆりさんは何も言わず、オチンチンを頬ばった。
ボクはフェラチオするさゆりさんの髪を撫でながら、目を閉じた。
さゆりさんは一度唇を離して、ボクの伸ばした足の間に座りなおした。
「飲ませて下さい、ノブさんの・・」
「うん、お願い・・」
さゆりさんは右手をオチンチンの根本に軽くそえて上下して、あいてる左手で玉袋を触ってくれた。
その優しくていやらしい舐め方に感じてしまって、ボクは早くもイきそうになった。
「さゆり、いいか?」
「・・・・」
コクっとさゆりさんが頷いた瞬間、大きな波が訪れてボクは射精した。
頭がジ〜ンとしびれて、ボクはベッドに仰向けになった。
さゆりさんはオチンチンを軽くしごいて、残りの精液を吸った。
「良かった、ノブさんが感じてくれて・・」
さゆりさんが、ボクの横に来て腕枕して言った。
ボクはさゆりさんの額の汗を拭いて「有難う・・」と言った。
「好きな人が気持ち良くなってくれると、女って本当に嬉しいんです・・」
「それはきっと男も同じだよ」
「オレだってさゆりが気持ち良くなってくれたら、嬉しいもんな」
「でも・・」
「・・でも?」
「うん、ゴメン・・何だか眠いんだ、凄く」
きっとバンドの練習の疲れも残っていたんだろう・・射精した途端、体中の力が全部吸い取られてしまったかの様に、一気に疲れがボクの全身を覆った。
「少し、眠ってもいい?」
「はい、見ててあげます・・」
さゆりさんはボクの髪を優しく撫でてくれて、ボクはその心地良さに目を閉じた。
そして本当に、ストン・・と眠りに落ちた。
夢は全く見なかった。
目覚めて起き上がった時、窓にはカーテンが閉まってて、部屋の中は足元を照らす小さな明かりだけだった。
「あれ?」
ここは?と、ボクは状況整理に少し時間がかかった。
「そうか、あのまま寝ちゃったんだ・・」
ベッドサイドの時計を見たら、10時を過ぎていた。
「うわ〜、寝過ぎだ!」
チェックアウトの時間を過ぎている事に、ボクは慌てた。
ベッドから出てガウンを羽織り、分厚いカーテンを開けた。
一気に眩しい光が流れ込んできてボクは目を細めた。
窓の外はもう、昼間の景色が広がっていた。
ふと窓際のテーブルを見ると、メモがあった。
「お早うございます、ぐっすりお休みだったので起こさずに行きますね。
この部屋は明日までキープしましたから、ゆっくりして下さい。