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リンコ

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 それでもきっと、由紀子からの何らかの釈明があるだろうと思っていた悠介は、自分からは何も言わずに夕方までじっと待った。ところが時間がどんどん過ぎて退社時刻になっても、由紀子から昨日の件に関しては何も言っては来ない。それどころか、そっと彼女を見ると、いそいそと帰り支度をしている。さすがに悠介も我慢の限界を超え、ツカツカと彼女のそばまで行くと呼び止めて言った。
「由紀さん、昨日は一体どうしたの?」
 真剣な表情で言う悠介の言葉に、由紀子はとぼけているのか? と思うほど呆気に取られたような顔で答えた。
「ん? 昨日って?」
「――僕、ずっと待ってたんだよ! 連絡しようにも携帯の番号も聞いてなかったし。どうして……」
 悠介の言葉を遮り、ようやく思い当たったように由紀子が言った。
「ああ、わかった! 悠介の家に行くって言ったことねっ」
 それだけ言うといきなり笑い出した。
「――キャハハハ。あれ、本気にしてたんだ!」
 そう言うと、いかにもおかしくて堪らないという風に腹を抱えて笑い始めた。悠介はわけが分からず、由紀子を呆然と見つめる。
「あれは冗談だったのよ。本気にしてたんだ。――こう見えて私、ちゃんと彼がいるのよ。それも悠介みたいなお子ちゃまじゃあなくて、素敵な大人の彼がねっ。昨日はその彼とのデートだったの。フフフ」と、嘲るように言う由紀子。
「えっ、……だって、この前僕の所に来た時……」
「バカね! 遊びに決まってるじゃない。そんなことも分からなかったの? これだから童貞くんは疲れるのよねー」
 悠介は、身体中の血液が一気に足元へ向かって急速に降下していくような気がして、足を踏ん張っていないと今にも崩折れそうで、辛うじて、悠介の男としてのプライドがそれを支えていた。
「じゃあもういいわね。私は行くわよ。今日も違う男の子と約束があるんだ!」
 高らかに宣言でもするように言うと、バックを手に、彼女は弾んだ足取りで部屋を出て行った。
「ああ、何てこと……どうして……」
 悠介は、突然目の前に現れた強盗に、鋭いナイフで胸を突き刺されたような、衝撃的で信じられない出来事に驚き、どこまでも深く、身動きもできないまま底なし沼に沈むが如き絶望感と失望感に襲われ、フラッとそばにあった椅子に座り込んでしまった。そしてそのまま頭を抱え込んで、身動きすらできないでいた。
作品名:リンコ 作家名:ゆうか♪