愛と苦しみの果てに
外は冷たい晩秋の雨。
そんな中を、啓太が傘も差さずに、一人歩いて去って行くのが見える。そして、その背中を大きく震わせているのがわかる。
多分、男泣きに泣いているのだろう。
啓太は男として苦渋の決断を下した。
洋介には、啓太の背中からそれが痛いほどわかるのだ。
こんな出来事があって、それからすぐに洋介はサンディエゴへと戻った。そして、またしばらくの月日が流れ、可奈子がボストンバック一つ抱えてやってきてくれた。
洋介と可奈子、キラキラと眩しい陽光のこの町で、二人の人生のやり直しだ。
ただ二人は結婚はしないことにした。
それは啓太にも優香にも、大変失礼なことだと思えたからだ。
ただ自由に、一人の男と一人の女、どこにでもいる普通の恋人同士のように暮らし始めたのだ。
そんな平和な暮らしの中で、いつの間にかまた三年の歳月が流れてしまった。洋介はもう還暦に手が届きそうな歳にもなった。
そんな平和なある日、娘の優香から洋介に一通の手紙が送られてきた。洋介への初めての手紙だ。
洋介はそれを胸を高鳴らせて読んだ。そして居ても立ってもいられなくなった。
洋介は今すぐにでも優香に会いたい。そしてそれ以上に、親友・啓太に会いたい。
もう一度、昔のように二人で飲み明かし、男の友情を暖めたいと思うのだった。
優香から届いた一通の手紙。そこにはこんなことが書かれてあったのだ。