愛と苦しみの果てに
洋介 様
サンディエゴの異国の地で、母・可奈子と一緒に、お元気でお暮らしのことと思います。
結婚式の披露宴からの御無沙汰をお許し下さい。
さて、突然のお手紙で驚かれたことと思いますが、今の私の気持ちをぜひ知っておいていただきたいと思い、乱筆乱文ではありますが、この手紙を認(したた)めさせてもらいました。
私の出生のこと、
そして身の回りに起こったいろいろな出来事、
パパ・啓太から聞きました。
正直申しまして、随分と恨んだり、悲しんだりも致しました。
そんな悶々とした日々の中で、子供の真帆を神様から授かりました。
そして、その真帆も二歳となりました。
二歳、それは私を初めて、そして最後に
洋介様に抱き締めていただいた歳だと母から聞きました。
それ以降、母の願いを聞き入れて、
ずっとお一人だけで暮らしてこられたとも聞いております。
最近、私の夫・健一が真帆を可愛がる姿を見て、
洋介様の生涯がどれほど辛いものであったのか、今、私はやっとわかるような気がしております。
もうなんの恨みもわだかまりもありません。
これからは、お父様と呼ばせて下さい。
お父様
今までずっと支えていただいて、本当にありがとうございました。
余談になりますが、
最近、パパ・啓太が、よくお父様の話しを寂しそうにしております。
だから一度、会いに来てやって下さい。
お願いします。
かしこ
優香より
そばにいた可奈子。こんな手紙を読み、急にそわそわし出した洋介を見て、一言呟くのだった。
「愛と苦しみの果てに……、
男の友情は、やっと本物になりそうだわ。……、良かったわ」
おわり