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ef (エフ)
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夢の途中8 (248-269)

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またもや香織は幸子の話に耳を疑った・・・

「それも、14年前、孝則さんとそのお方があないな事になるずっと前からそうやったと云うことらしいわ・・・
その事は当の【花田総合病院】では知らん者は無い云うことらしいし、その御子が生まれてからは、一つ布団の中で三人が【川の字】になって寝起きしてたと云うことや・・・
ひょっとすると、孝則さんのお母さんがご存命の頃からや知れんとの事や・・・」

孝則の父・巌が養女で在る美智子と男女の関係とは・・・
ワンマンな巌が、お嬢様育ちで人を疑う事を知らぬ登美子の他に過去に何人か愛人を作った事は生前孝則から聞いて知っていた。
けれど、まさか養女とした美智子と・・・
しかも、息子孝則に美智子を娶らせようと、あの手この手で香織を孝則から引き離そうとした張本人の巌であるのにだ。
香織は余りにもおどろおどろしい事に吐き気さえ覚えた・・

「まあ、口さがない無責任な噂話やさけ、『ココだけの話ですけど・・』と、園田はんがウチに耳打ちしてくれはったんや・・・
そやから云うて、今更ナニがどうなるものでもなし、かえってアンタの心を乱す事になるかも分からんと思い、決して云うつもりは無かったんやけど、あれから14年の年月も経った事や、今日、香織さんにこうして御目にかかって、14年間のアンタと今のアンタを比べるともう別人やった♪
今のアンタやったら、在りのままを受け入れる事が出来る、そう思て話す事にしました。

香織さん、今まで辛い事が在りましたけど、今日を限りに此処に置いていきなはれ・・
此処に哀しみだけを置いて、アンタは明日から新しい人生を歩んで行くのや・・
否、そうせなアカンのや♪
その哀しみはウチが此処で封印しておきます。

アンタ、ひょっとして、好きな御人が居るのとちゃうか?
今日のアンタは女として綺麗やでぇ~♪
14年の歳月は女にとって決して短いモンやないけど、今からでも女のとしての幸せは掴めます♪
なあ、香織さん、幸せになりやァ~♪」
慈母の優しい目が香織を見つめた。

『・・・・奥様・・・・・・』
香織には溢れる涙で幸子の顔が滲んでしか見えなかった・・




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章タイトル: 第29章 虞美人草 2008年 秋


関西での総ての予定を消化し、香織は8月20日に藤野に帰って来た。
蒸し暑い関西とは湿度の差で感じ方は違うものの、藤野でも寒暖計の数字は連日30度を超えていた。
たった二週間藤野を離れただけなのに、ひどく遠い処まで旅をしていた気分だった。
同じ日本の中でチョット無理をすればいつでも行けた場所、神戸・・・
懐かしさの半面、振り返りたくない思い出も混在する街、神戸・・・
その意味では香織にとって遠く、足を踏み入れ難い街ではあったが、今やっとその結界を解く事が出来た。
14年間ずっと顔を背けては来たが、優一のお陰でやっと懐かしい母の胸の中にいだかれた、安らかな気分だった。
それは長年香織の胸の中で、澱(オリ)として深く澱(よど)んでいたモノを全部吐き出した後の爽快感の所為かも知れない・・・
そして、香織にとって優一の存在がより鮮明に感じられた旅だった。
同じ傷を心に抱えた香織と優一・・・優一となら分かりあえる・・・
何となくそんな気がして、優一の事を考えるようになった香織であった。
若い頃の様にメラメラと激しく燃え上がる感情とは違い、灰の中で熾き火が僅かに熱を帯び続けるように、香織は優一の事を意識し始めていた。
二人で神戸を訪ねた後の別れ際、優一が香織の手を取って云おうとしていた言葉の先を香織は考えていた・・・
きっと自分と同じ感情を優一も自分に持っていてくれるに違いない・・・
そうは思いたかったが、何一つ確証は無かった・・・
それこそ、若い頃なら自分から優一の前に立って、『好きです』と一言云う事も出来るだろうが、気まぐれの感情ならまだしも、『好き』だけでは済ませない【大人の分別】が二人にはあるのだ。



神戸から帰った翌日の21日から香織は店を明け、営業を始めた。
何処からともなく【喫茶・ラベンダーの香り】再開を聞きつけた常連客も早朝から来てくれた。
駅前の旅行社の隠居・沼田老人に、魚の仲買人・作山、そして熊田ファームの園長・熊田もカウンターに並び腰かけていた。
「それでどうだい、久しぶりの神戸の街は?すっかり変わってたろう?(*^。^*)」
熊田はイガグリ頭を掻きながら笑顔で香織に尋ねた。
(常連客は、香織と優一が関西で合流した事を知らなかった・・・)

『うん、ホント、浦島太郎になった気分だったわ♪(#^.^#) 私は瓦礫の山に囲まれた神戸を知ってるから、今は本当に夢のようだわ・・・でも熊田さん、もう大丈夫なの、出歩いて?まだ怪我して1カ月じゃない? 全治3カ月だから私、てっきりまだ病院だと思ってたのに・・』
「^^;ああ、もうどうってことねえさァ♪今はこの松葉杖だって本当は要らねえのに、
娘が五月蠅くってよォ~!(;一_一)」
[そらママの前だから無理してんじゃねえのか、熊さんよォ?静ちゃんがアノクソオヤジ、ちっとも云う事きかねぇ、本当ならまだ入院してなきゃなんないのに半月でこんなトコは嫌だァ~~!っておん出ちゃうし、ってぼやいてたぜ♪(^。^)y-.。o○]
何時ものようにねじり鉢巻きの作山がチャチャを入れる。
「バッキャロォ~!アイツがそもそも大袈裟なんだよ!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
大体、あんな消毒薬臭い処にあれ以上入れられたら、本当に病人になっちまわァ!
骨なんかよォ、ほっといたって勝手にくっ付くんだよ♪
それよか、こうして適度に身体動かして、他の筋肉落とさねえようにしねえと、本当に寝たきりになって、家族に迷惑掛ける事になっだろ?
俺はよォ、息子や娘に迷惑掛けねえように・・・そう、云うなりゃ、これが【子供孝行】
ってもんよ♪(^。^)y-.。o○」

〈プッ!(≧ε≦)〉
窓辺のテーブル席で新聞を読んでいた田沼老人が思わずコーヒーを噴き出した。




「ママ、・・・・・静の奴、アンタに余計な事を言ったんじゃないか?^^;・・」
作山と田沼老人が先に店を出た後、熊田は香織に尋ねた。
『え?何の事?』
「それはそのォ~・・・・・俺の事をどう思ってるかとか、こうとかよォ~♪^^;・・・・」
『・・ええ、聞かれたわ・・・私と熊田さんはそんな間柄じゃ無いって言っといたから♪(#^.^#) 静ちゃん、お父さんの事が心配なのよ? そりゃ私は此処で熊田ファームの皆さんにお世話になってるし、御贔屓にして頂いてるけど、私と熊田さんはただのお友達よって♪(^v^)
第一、私は一度結婚には懲りているからもう誰にも縛られたくないの・・・・』
「ママ、俺は何もアンタを縛るとか何とか(;一_一)・・」
熊田が云いかけたその時、店に客がやって来た。
夢島建設の古畑だった。

[ママ、お帰り~~♪(^^)/ どうだった、久しぶりの関西は? 向こうで林部長と一緒だったんだって?(*^。^*)]
『・・ああ、古畑さん・・・・エエ、偶然、・・・偶然ね^^;・・・・』