名探偵カラス Ⅲ
寺に着いて、ポーのネグラへ目をやると、ポーとホワイティは仲良く並んで、巣の中で見つめ合い何かを話していた。遠目にそれを見て、俺の胸がキュッとなった。
しかし、せっかく来たんだから少しでもホワイティと話したい。俺はグッと堪えて、声を掛けた。
「よぉ! 具合はどうだい?」
「やぁ、カァーくんまた来てくれたんだね」
「心配してくれてありがとう、カァーくん」
「少しは良くなったのかい?」
「うん、何とか起きれるようにはなったみたいなんだ」
「ずっと寝てばかりもいられないしねっ。ふふっ」
笑顔のホワイティを初めて見たら、俺の胸がまたキュッと締め付けられた。
「そうか、起きられるようになって良かったよ。もしかしたら明日には飛べるようになるかもなっ」
「うん、そうだね。そうなるといいねっ」
「そうね。私もそうなりたいわ。早く空を飛びたい。それに……」
そう言うと顔を曇らせ続けた。
「――それに、真由美さんのことが心配だから早く帰りたいの」
「――うーん。そうだよなぁ。やっぱり心配だよなぁ」
俺が言うと、ポーも同調の意を示して頷いた。
「じゃあ明日、もし飛べるようになったら家に帰るかい?」
「えぇ、できたらそうしたいわ」
「じゃあ、その時にはボクが送っていくよ」
「いや! その時には俺が送っていくよ」
ここで出番がなくっちゃ、俺はもうポーに勝ち目はないし、どうしようもなくなるぞ! そんな強迫観念に駆られた俺は、断固として言い張った。
翌日は無理をせず、夜、真由美さんの仕事からの帰宅時間を見計らって帰ろうということで話は決まった。