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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・弐】焼き焦げ

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ココンコン…

「慧喜ッちゃーん! あ・け・て」
南が慧喜の部屋だという所の窓をノックして声を掛けた
「南…たぶん慧喜は…」
緊那羅が南に声を掛けると南が振り返り笑った
「見えないかもしれないけど俺結構しつこいんだよねぇ? 粘るよ? 山芋」
南がハハッと笑って再び窓の方を見る
「慧喜ッちゃーんってばー!! あーけーてー!!」
二回目の南の呼びかけにも慧喜は反応がない
「…ここは大丈夫だからラムちゃんは掃除してきなよ。まだ途中なんだろ?」
緊那羅に笑顔で言った南を緊那羅が黙ってみる
「慧喜ッちゃん…じゃぁ開けなくてもいいから話だけチョロッと聞いてくんない? ってか勝手に話すから」
そういうと南は上着を思いっきり引っ張ってそのまま雪の上に座った

「京助から少しだけ慧喜ッちゃんのヒッキーの原因聞いたんだけどさ…」
手に持っていた袋を側に置いて南が話し始めると緊那羅もしゃがんで話を聞き始める
「悠には境界線っていうか誰にでも平等に優しいって言うか…とにかく俺も悠に助けられたんだよね慧喜ッちゃんと一緒で」
少し気温が上がってきたのか屋根に残っていた雪が水になってポタポタと垂れてきた
「俺サァ…今でこそこうやって明るく元気でよい子でやってるけど昔はスッゲェおとなしくて暗くて友達なんていなくてサァ」
ハハッと苦笑いをした南を緊那羅が見る
「…しかも俺実は正月町の生まれじゃなくていわゆるアレ…前は別のところに住んでてさ今はもういないけど婆ちゃんと同居するって言うから引っ越してきたんだ。小学校4年の時だったかなァ前にいたところでも一人だったのに引っ越してきたばっかのコッチに知り合いとかいるわけないだろ?だからいつも一人でさ…」
南が過去を思い出したのか少し表情が暗くなった
「そうして何日か過ごして…悠に会ったんだ」
南が顔を上げた

「なにそれ?」
両膝に生暖かく少し湿ったような感覚がして南が顔を上げると見知らぬ子供が大きな目で南の手を見ていた
「え…」
いきなり見ず知らずの子供に話しかけられて南が慌てる
「見して~」
その子供は満面の笑みを惜しげもなく南に向けた
南の膝に両手を付いて身を乗り出して何とか南の手の中のものを見ようとしている子供を南はどうすればいいのかわからずただ戸惑っていた
「悠!! 何して…てアレ? お前確か南とか言う…何してんだ?」
今度は自分と同じくらいの歳の少年がやってきて南に声を掛けた
「え…あ…あの…」
それまで滅多に人に話しかけてもらったことなんてなかった南が返答に困っていると【悠】と少年に呼ばれていた子供が南の手の中のものを取った
「あ…」
「すごぉい!! うさぎしゃんだ!」
縫いかけだったウサギのマスコットを目をキラキラさせながら悠が笑った
「おぉ!! すげぇ! なにこれお前が作ってるん?」
少年も悠の手にしているウサギのマスコットを見て声を上げた
「あ…針…ついてるよ? 危ない…」
南が悠の手にそっと触れた
「ねぇねぇ!! 僕にも作って~?」
ウサギのマスコットを南に返しながら悠が言う
「え…」
「こぉら悠! 困ってるだろ??」
悠の言葉に固まっていた南を見て少年が悠を軽く小突いた
「あ…」
「だって~凄いんだもんこのお兄ちゃんのうさぎしゃん!! 可愛いねぇ凄いねぇ」
笑顔で南を見上げて悠が言う
「えと…もう少しでできるから…そしたらコレあげる…よ?」
「ほんとう!!? お兄ちゃんあいがとー!!」
小さく消えそうな声で南が言うと悠が南に抱きついた
「いいのか?」
南の隣に腰を下ろした少年が聞く
「うん…別にただ作ってただけだし」
そう言って南が針を動かし始めるとそれを少年と悠が黙って見る
「…すげぇ~…器用だなお前」
「ウサギしゃん♪ ウサギしゃん♪」
感心する少年と嬉しそうな悠をチラッと見て顔を赤くしながら南はウサギを縫っていった