日のあたる場所へ
「…あった……!」
真っ暗な教室に明るい光が差しこむころ。
俺はやっと太陽さんの財布を見つけた。よかった。校内にあって。
急いで太陽さんが寝てる保健室に走った。太陽さん、喜んでくれるかな…。また、ありがとうって、笑ってくれるかな。
地味で目立たなくて、なんにも出来ない役立たずな俺に、また笑ってくれるだろうか…。
俺はずっと、保健室に行くまでの廊下を幸せな気持ちで走った。
「…あれ……?」
保健室に来たけど、太陽さんが寝てるはずのベットには太陽さんの姿がなかった。
どこだろう…。まさか、もう帰っちゃったんじゃ…。
「猫の人!」
「ぅあっ!?」
突然背後から大きな声がして、おもいっきり跳ね上がってしまった。
び、ビックリしすぎて心臓飛び出るかと思った…。
「猫の人まさか帰ってないのか!?」
「え…ぁ、はい…」
太陽さんがものすごい勢いで俺に詰め寄ってきた。
「ダメだろ!親御さんが心配してるぞ!」
「ぁ…親は、いません…から…」
ちょっと照れながらそう言ったら、太陽さんは少し難しい顔をした。
俺、変なこと言ったかな…。
「あー…なんかゴメン。」
「え?…な、で…太陽さんが…」
「太陽さん?」
あ、しまった。
「ぁ…いえ…」
「てか、もう登校時間だし…」
「そ、ですね……あ、コレ…」
「ん?おぉ!!俺の財布だ!猫の人が見つけたのか!」
すごい嬉しそう…よかった。
「は、…はい」
「マジありがとな!猫の人」
どうしよう…すごいドキドキする。
俺はおかしんだ。男なのに男にドキドキするなんて、俺はバカなんだ。
太陽さんを見てると、すっごくドキドキして、抱きしめたくなる。
でも俺、見てるだけで、それだけですごく嬉しいから。だから触るのは我慢します。
「そーいやさ、猫の人ってなんていうんだ?」
「え…?」
いきなり太陽さんに話しかけられて上を向いた。
「名まえだよ。な・ま・え!猫の人が名前じゃないだろ?」
「ぁ!…隅本、です。」
人に名前教えたの始めてかもしれない。だからなんか緊張してきた。心臓がうるさいぐらい鳴ってる。
「苗字でなくて、下の名前は?」
「ぇと、………日影です」
「日影かぁー、なんか暗いな」
「はい…よく、言われマす」
「いや……冗談だよ?」
あ、そうなんだ。本当に暗い名前だから気づかなかった。
「てかさー、なぜに同い年なのに敬語?」
「え?…あっ」
そういえば俺ずっと敬語使ってた…のか?。
あんまり意識してなかったからわからないや…。
「とりあえず……オレ、驫木太陽な!さんとか君とか付けなくていいから」
「は、あっ……うん…」
驫木太陽…とどろき、か。やっぱり太陽さんは苗字もカッコいい。
「よろしくな、日影」
あ、名前で呼んでくれてる…嬉しい。
「は、はい……よろしく、です」
「おい。敬語…」
「あっ……すいません…」
「…まぁいいや。」
…太陽さん。ため息ついてる…。俺に呆れたんだ、きっと。