日のあたる場所へ
教室に戻るとすでにほとんどの人が席についていた。
まだ、先生は来てないみたいだけど。
「あっ、太陽!」
太陽さんの後ろから一緒に教室に入ると、大きな声で太陽さんが呼ばれた。昨日の友だちっぽい人に。
友だちっぽい人は太陽さんに向かって何か怒ってる。…太陽さん、怒られるようなことしたのかな?。
「お前、黙って帰るなよな!」
「悪い悪い。つか帰ってねぇもん。」
「は?じゃあどこにいたんだよ」
「学校に泊まった」
「は?なんで?」
「もういいだろ。行こうぜ日影」
「ぇ…あ、うん!」
太陽さんに呼ばれて、俺は犬みたいについていった。
まさか、今の会話で話しかけられると思わなかったな…。
太陽さんの隣。自分の席に座ったら、太陽さんの友だちっぽい人が俺を睨んできた。
怖いです…。
「そういえばさー…」
太陽さんが突然口を開いて、俺も友だちさんもそっちを振り返った。
「日影は携帯持ってる?」
「ぇ…?携帯、あります…けど…」
携帯…あるけど、まったく使ってないや。
「オレの番号、教えてもいい?」
太陽さんの番号!?
「う、うん!…えっと、あれ…?」
どうしよう、せっかく教えてもらえるのに買った時しか登録したことないから…やり方が……。
俺のバカ!なんで練習しとかなかったんだ!。
「……見せて?」
俺がノロノロしてたら太陽さんの手が伸びてきて、携帯を取られた。
あぁ。怒ってる、かな…?。
しばらく携帯でカチカチやってた太陽さんは携帯を俺に向けてきた。
「登録名は自分で打てるよな?」
「ぁ…はい」
太陽さんから携帯を受け取って名前を登録した。もちろん「太陽さん」で。
あぁ。どうしよう。嬉しすぎて死ぬかもしれない。大好きな太陽さんの声をいつでも聞けるなんて。夢みたいだ。
俺は携帯を胸に抱きしめると、太陽さんがまた眩しい笑顔で笑った。
「日影はなんか可愛いなぁ」
え?俺、可愛い…のか?。太陽さんのが可愛いと思うけど…。
「あ、太陽さんのが……かわ…いぃ、です……」
「ぶはっ!」
本気でそう言ったら太陽さんは吹き出した。
「ははははははっ!やっぱお前面白いよ!!」
そう言って太陽さんは俺の背中をかなり痛いぐらいに叩いてきた。
痛かったけど、太陽さんが嬉しそうだから俺も笑った。
「…なぁ、アンタ」
二人で笑ってたら、太陽さんの友だちさんが俺に話しかけてきた。
「アンタってたしか地味で目立たない人だよな?」
「ッ………」
いきなりそんなこと聞かれて、思わず顔を下に向けてしまった。
忘れてた。そういえば俺、いつも一人ぼっちだったんだ。太陽さんに会うまで…ずっと。
「おい、遠山…」
「うるさいな。太陽は黙ってろよ」
やめて。
「うるさくねぇよ。お前なに言ってんだよ…」
「なにって?隅本さんに質問してるだけだけど?」
やだ。
「質問じゃないだろ。そんなこと聞いてどうすんだよ」
「別に、ただ隅本さんにアドバイスしてあげようとしてるんだよ」
嫌だ。
「はぁ?」
「…そのまま地味に生きてたほーが、いいんじゃない?って」
なにかが切れる、音がした…。