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日のあたる場所へ

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学校が終わってみんなが帰る時間。
俺はなんとなく一人で帰るが嫌で、いつも校庭の裏庭で迷子の猫と遊んでる。
猫と一人で遊ぶ男子なんて、きっと俺ぐらいだろう。みんな友だちとかといる方が楽しいだろうし。

「にゃーん」
「…お前は俺なんかと一緒で嫌じゃないか…?」

なーんて、猫相手にアホみたいな質問をしてみる。バカか。俺は。
誰もいない夕方の裏庭、暑くもなく寒くもない。ちょうどいいぐらいの気持ちいい風が吹く。
同じ一人なら、だれもいないところのほうが好きだ。


「あ、ねこだぁー」

後ろから声がして猫を抱きしめたまま思いっきり立ち上がった。びっくりした。誰だろう。
振り返ったら、さっきの太陽のような彼が友だちらしき人影と一緒に俺の腕の中の猫を見つめていた。
どうしよう…またドキドキしてきた。

「にゃあ」
「かわいーなぁ。コイツ」
「そーか?オレ犬派だからイマイチ興味ないな」

太陽のような人は友だちと楽しそうに話してる。顔が近い。
静まれ、心臓うるさい。静まれ。
俺バカみたいにドキドキしてる。男相手に。俺バカだ。気持ち悪い。…死にたい。

「なぁ、これアンタの猫?」
「っぇ…?」

いきなり話しかけられて、変な声が出た。うぅ…死にたい。
きっと相手も驚いてる。きっとなんだコイツ、キモイ。って思われてる。
恐る恐る彼の顔を覗いたら、肩を震わせて涙目になっていた。…?どうしたんだろう?。
次の瞬間、太陽のような彼は思いっきり吹き出した。それにビックリして腕の中の猫は俺の腕から抜けて足元で小さくなっている。
本当に俺もビックリした。

「ぶっはははははは!」
すごい笑ってる。やっぱ俺なんか変なことしたんだ。
「…おい、たいよう」
彼の隣に立っていた人が、彼に向かって呆れたような口調で名まえを呼んだ。
たいよう…たいようって言うんだ。…やっぱり太陽なんだ。
「だ、てぇ、コイツっ…ひひ、いま、…っはははは!」
太陽さんは俺のことを指差してまだ笑ってる。俺のなにがそんなに笑えるんだろう?。
俺はわけがわからなくて、ただただ固まっていた。
「あー、もう!帰るぞ太陽!」
「へ?あ、おう。またなー猫の人」
猫の人…そんな変なあだ名をつけて、太陽さんとその友だちは去っていった。
なんだかやっぱりすごい人だ。本当に名まえまで太陽だったし。
それに太陽さんは猫が好きらしい。俺と一緒だ。嬉しい。
こんなに影の薄い俺を、あんな楽しそうに笑って見つめてくれた。それだけで俺は嬉しい。

その日、俺は嬉しい気持ちでいっぱいだった。



作品名:日のあたる場所へ 作家名:れん