日のあたる場所へ
変えたい…。
「ぁ…あの、」
変わりたい!。
「ぉ、は…ようっ…」
前を歩いていた男子二人は、俺に気づかずそのまま教室に行ってしまった。
あぁ…、またダメだった。
俺、隅本日影。高校二年生。
存在感0の男…。
ひたすら目立たない。とにかく気づいてもらえない。
喫茶店で注文二時間待ちとか。小学校の遠足で置いて行かれたり。
地味な容姿と性格で、中学校では名まえさえおばえてもらえず。高校入学で心機一転するつもりが…。
「ともだち、三人はつくるぞっ」
キキキキキキキキッ
「あ…!」
ボンッピーポーピーポー。
存在感のなさが災いし、全治二ヶ月のケガ…。
やっと登校してみると友だちグループはすでにできていて、入る余地もないまま二年に進級…。
みんなわざとっていうわけじゃないし。いじめられてるわけでもないから、へいき…なんだけど…。
「………」
やっぱり一人は、少し寂しくて…。
でもこれは自分のせいって思えば、なんだかしょうがないなって思える。一人だって、もう慣れてきたし…。
けど…ずっとこのまま…なのかな…。
「じゃあ、つぎ隅本」
「あっ…はい」
先生に呼ばれて急いでノートのページを開く。
どうしよう…変な声でてなかったかな…。
「ぁ…When in the courseof human events,itbecomes necessary…」
「よしっカンペキだ隅本!」
思わず恥ずかしくなって急いで席に着いた。褒められると、胸がぎゅって熱くなるから不思議だ。
しばらく下を向いてたら、隣の席の子に肩を叩かれてビックリした。
驚いた顔のまま隣を振り向くと男だけどすっごく綺麗な金色の短い髪を後ろで小さく縛っている男子が、すごい冷や汗を掻きながら俺の事を睨んでいた。
なんだろう…俺なんかしちゃったかな。
少しびびってたけど、彼の口から出たのは予想もしてない事だった。
「消しゴム貸して!」
小声だけどハッキリそう言った彼に思わず固まってしまった。
え…消しゴム?
「おい!早く貸してくれよ!」
「ぁ…は、はい」
急かされて消しゴムを投げる勢いで渡した。
俺から奪った消しゴムで急いで何かを消して書き直す。彼の動作をただ呆然と眺めてた。
眺めてたら上を向いた彼と目が合って、訳も分からず赤くなる。
「ありがとな。助かったよ」
彼に消しゴムを返してもらうのと、授業が終わるのがちょうど同じタイミングだった。
太陽のような笑顔で俺にお礼を言った彼はそよ風のように教室から去っていった。
なんか、すごい人だったな。俺なんかとは逆でキラキラしてて、そこにいるだけでまわりが明るくなる。
太陽のような人…。
「…俺、なに言ってんだ…」
なんか女の子みたいなこと考えてる…。キモい。自分が。
暑さで頭がイかれたのかもしれない。きっとそうだ。
だからこの胸のドキドキ鳴ってるのも、きっと今年の夏が異常に暑いせいだ。