ハアちゃんはご近所の星☆
その日から傲慢だった親父は、
物静かな人に変わってしまった。
口数も少なくいつも頭(こうべ)を垂れた親父。
そんな親父を俺は見ていられなかった。
数日後、俺は妻と夕飯の買い物をしに近くの商店街に行った。
帰り道で、たまたまペットショップの前を通りかかった。
店頭のサークルの中で子犬達が、
我先に抱いてくれ撫でてくれと言わんばかりに騒いでいる。
そんな中でサークルの隅でおとなしく伏せて、
ただじっと俺を見つめる子犬が1匹いた。
俺はそいつにふらふらと引き寄せられた。
俺はサークルに近づきそいつを抱き上げて、
『ひかえめだなお前は。
そんなんじゃあ買ってもらえないぞ。』
と言って、そいつの鼻を自分の鼻でつんっと突いた。
そいつは、目を細め耳を垂れて俺の鼻をペロペロなめた。
俺はそいつをサークルにもどし、
『じゃあな、頑張れよ。』
と、言った。そして、
『帰ろ。』
と妻に言って歩きだした。
みょうに後ろ髪をひかれる思いで足取りが重い。
作品名:ハアちゃんはご近所の星☆ 作家名:★風神雷神☆彡