ハアちゃんはご近所の星☆
あれは、暑い夏の朝だった。
俺が家を出る時に、ハアが一生懸命歩いて俺に近づいてきた。
ハアは足腰も弱くなり、腹の中のしこりも
ゴルフボールほどの大きさになって硬くなっていた。
かなり苦しそうな息使いだった。
それでも、しきりに撫でて撫でてとせがむ行為をする。
『ようし、いい子だ。ハアは本当にいい子だぞ。
苦しいか?大丈夫か?ようし、ようし。
俺はハアが好きだ。大好きだ。今までありがとうな。
うちに来てくれてありがとうな。
本当にありがとうな。
もう、いいんだよ。無理するな。ゆっくり寝ろ。
今日も暑くなるぞ。ほら、日陰に行って寝ろ。』
ハアはずっと俺の手を舐めていた。
俺はハアを抱きかかえ、庭の日陰のあるところへ寝かせた。
そして飲み水をハアの前に置き、
『ようし、ようし。じゃあな。行ってくるからな。ゆっくり寝ろ。
ね〜んね〜♪ね〜ん〜ね〜♪ハアちゃん、ね〜んね♪・・・。』
子犬の頃、こうして妻がハアの背中をそおっとたたきながら、
まるで人間の赤ちゃんを寝かしつけるように歌うと、
ハアはウトウトと寝ついていた。
俺はあの頃を思い出し、
『 ね〜んね〜♪ ね〜ん〜ね〜♪ ハアちゃん、
ね〜んね〜♪・・・。』
と、歌っていた。
作品名:ハアちゃんはご近所の星☆ 作家名:★風神雷神☆彡