小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ef (エフ)
ef (エフ)
novelistID. 29143
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夢の途中6 (182-216)

INDEX|7ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

香織はリビングの姿見の前で、持参した洋服の中から白地にブルーの水玉模様のワンピースを身体の前に当てていた。
『今日も暑いのやろなァ~、ナニ着て行くか迷うわ~♪(#^.^#)』
[おばちゃん、今日はひょっとしたらデート?暑いから迷うのとちごて(違って)、今日会う人の事を想うから迷てるんやろォ~♪(≧∀≦)]姉の奈美が麻美の反対側から囃した。
[え?おばちゃん、そうなん?おばちゃん、彼氏居んの(居るの)?(=^・^=)]
[麻美みたいな子供には分からんやろなァ~(-_-)/~~~ピシー!ピシー!]
[またそんな事云う~~!(ToT)/~~~]麻美が奈美に掴みかかる!
『うふふふ♪(^_^)/コレコレ、そんなんやあらへんて♪ケンカしたらアカヘンがな♪
今日は北海道でお世話になった方の御供でご一緒するだけやがな♪(#^.^#)』
[お世話になった方て?やっぱりおばちゃんのエエ人ちゃうの?なあ、麻美?]
[そやそや♪さっきからおばちゃん、ものすご楽しそうやもん♪(#^.^#)絶対恋人やわ♪]
『さあ、どやろねぇ~♪(^_-)-☆』
二人の姪っ子に散々冷やかされて、香織は池田のマンションを10時半に出た。
優一との待ち合わせは阪急梅田の改札に12時だ。
美羽のマンションから梅田まで阪急電車宝塚線の急行で僅か30分の道程だったが、香織の性格上人を待たせるのは嫌いだったからだ。
待たせる位なら先に行って、これから出会う人との事を一人想うのが好きだった。
予定通り、11時には梅田駅に着いた。
阪急梅田駅は阪急電車総ての終着駅で在り、始発駅であった。
此処からは京都にも宝塚にも、そして孝則と暮らした神戸にも行けた。
幾つものホームが平行に並び、全体を背の高い大屋根が包んでいる・・・
それはまるでヨーロッパ大都市の鉄道のセントラルステーションを連想させた。
そんな駅を見ていると、映画好きの香織は、ソフィアローレン、マルチェロ・マストロヤンニ主演の【ひまわり】のラストシーンを思い出すのだった・・・




【ひまわり】は1970年のイタリア映画であった。
ソフィアローレン演じるジョバンナとマルチェロ・マストロヤンニのアントニオが激しい恋に落ちやがて結婚する。
しかし幸せは長く続かず、二人は第二次世界大戦の為引き裂かれ、出兵したアントニオはソ連で行方が知れなくなる・・
終戦後、ジョバンナはアントニオを待ち続け、なんとか同じ部隊に居た同僚の男を見つけ出し、話を聞くジョバンナ・・・
男に依れば、アントニオは極寒のソ連の雪原で倒れたが誰かに助けられたと云う。
ジョバンナはアントニオの生存を確かめるためソ連に向かった。
ジョバンナはソ連に着き、アントニオの写真を見せて回っていると、一軒の家を紹介される。
その家を訪れると、幸せそうな妻子の姿があった。
アントニオは自分を援けてくれた娘・マーシャと別の家庭を築いていた・・
真実を知り傷心したジョバンナは、そのままイタリアへの帰国を決める。
駅で汽車を待っていると、仕事帰りのアントニオが現れる・・
目と目で語り合うジョバンナとアントニオ・・・アントニオの目は明らかに狼狽している・・
ジョバンナは何も言わずに汽車に飛び乗り、涙を流し去って行く。
後日、アントニオは考えた末、もう一度ジョバンナに会うためイタリアへと向かう。
アントニオの選んだ選択は・・・・・
悲しみを堪え、セントラルステーションで去りゆくアントニオの乗った列車を見送るジョバンナのラストシーン・・
全編を通し、ヘンリーマンシーニのテーマ曲が美しく、そして悲しかった・・・




香織はその古いイタリア映画と自分を重ね合わせていた・・・
孝則が震災の1カ月後に亡くなった後、葬儀こそ香織が喪主となり神戸で執り行われたが、遺骨の殆どは埼玉の実家に持って行かれた・・
そして更にむごい事に孝則の父・巌は、香織に花田孝則の籍から除籍する事を迫る。
その為に分厚い札束の山を香織の前に積んで迫った巌・・・
何とか木島が仲に入り、今後花田本家には何も要求しないとの一筆を書かされ、除籍だけは拒否した香織では在ったが、苦しみはそれだけでは終わらなかった・・・
孝則が死んで2か月程経ったある日、孝則の形見の一つである携帯電話が鳴った。
相手の名こそ表示されなかったが、見覚えのある番号に香織は誰からの電話か悟った。
美智子であった。
『・・・・もしもし・・・・・』 
「・・・美智子です。 」   」
『・・はい、香織です・・・・』 
「この前はお父様が無理な事を申し上げて、御免なさね。」
『・・・いえ・・・・・』
「でも、もうそんなことどうでも良くなったから貴女にお話ししなければと思い、電話しましたの。」
『・・・・何の事でしょう? 』
「貴女も喜んで?私、妊娠したの。 分かる?この意味・・』
『え?・・・・・美智子さんが?・・・・・・・・・はっ!』
「おほほほ♪ 鈍い貴女でもようやく分かった様ね。そうよ、孝則さんの子を授かったのよ!」
香織は目の前が真っ暗になった・・・・まさかとは思うが孝則と美智子が・・・・・
孝則と美智子がかつて許婚で在った事は当の夫から聞いている。
身体の繋がりが在った事も・・
横浜に居る時からあからさまに美智子が孝則に接近していた事も知っている・・
けれど、孝則は香織を愛しているからこそ、埼玉の花田総合病院の後継者の地位を捨て、巌から勘当を申し渡され、この神戸まで逃避行して来たのだ。
それなのに何故?
確かに、孝則の母・登美子が亡くなった翌年から、毎年の命日・法事には孝則だけ帰参する事を許され、埼玉に一泊か二泊して帰っていた。
香織は心にザラつく物を感じながらも、愛する夫を快く送り出していたのに・・・

「・・・・?貴女、聞いてるの? 私は貴女が花田家の嫁として出来なかった花田家の後継者を身籠ったのよ?  
おほほほ♪ まあ、誰も貴女何か花田家の嫁とは思っていなけど・・うふふふふ♪ まあ、そう云う事だから、貴女は好きにすれば良いわ。お父様も大喜びよ♪ 私とこのお腹の中の孝則さんの子とで、花田家を守って行くから。今日はそれだけを貴女に言いたかったの。じゃあ、御免遊ばせ。」
  
ツーッ ツーッ ツーッ ツーッ・・・・・
香織は無言の電話をただ見つめていた・・





その頃、香織は奈良の美羽の社宅の近くに部屋を借り住んでいた。
孝則が亡くなった際のゴタゴタや、震災の傷跡がまだ生々しい神戸では到底暮らしていけなかったからだ。
木島医院も、孝則と云う木島の片腕とも言える医師を失い、一旦再開した診療も止めざるを得なかった・・・
木島は不本意では在ったが、妻の実家のある京都に行たのだった。
夫を亡くし、失意のどん底にある香織を見かねて、木島夫婦も一緒に京都に来るよう香織に薦めたが、姪っ子が居る奈良の方が気も紛れると言って、香織はついて行かなかった。
美羽は美羽で、姉の精神状態が心配で社宅に同居する事を願ったが、香織は固辞し、近くのアパートに暮らす事で折り合いを付けた。
この日も夕方まで美羽の家に居て、最近帰りが遅い武雄を除く女4人の夕食は賑やかで楽しかった。
作品名:夢の途中6 (182-216) 作家名:ef (エフ)